気軽に伝統文化を体験できる施設開業 和の心を世界に発信する
路地裏寺子屋 rojicoya 代表 米本 芳佳(よねもと・よしか)
書道に親しみ 海外を旅して芽生えた思い
私は幼い頃から書道に親しみ、日本の伝統文化の美しさや精神性に魅了されてきました。大学時代にバックパッカーとして海外を旅する中で、自国の文化を誇りに思い、大切に守る人々と出会い、その姿勢に心を打たれました。こうして、日本文化の継承と発信の大切さを実感するようになりました。
この思いを形にしたのが、「路地裏寺子屋 rojicoya」です。前職が看護師である私は、多くの人が死の間際に「もっと自分を大切にすればよかった」と語る姿を目にしました。また、子育ての中で「自分を誇れる環境、違いを才能として認め合える社会をつくりたい」、そんな願いが生まれたことも起業の動機でした。
皆さんは、伝統文化に触れたとき、どんな気持ちになるでしょうか。その奥深さや美しさに心を動かされることもあれば、少し難しさを感じることもあるかもしれません。私たちは、伝統文化の本質に感謝とリスペクトを忘れず大切にしながら、世界が求める本物の和の魅力を伝えたいと思っています。
苦難を乗り越え 多くの人に感動を届ける
2018年、子ども向けに和文化の地域イベントを開催し始めました。三世代交流のきっかけにもなり、やりがいを感じながら数年開催し続けているうちに、神社仏閣、協賛企業、区、町会など、つながりが広がりました。20年、イメージと合う古民家を借りられることになり、ついに拠点づくり、起業へと踏み切りました。
しかし、最大の壁は資金調達でした。当時、6歳と3歳の子どもを育てながら、第三子の妊娠も重なり、家族への負担は避けたいと思っていました。経営経験がなく手探りでしたが、東京都などの支援制度を活用し、税理士や弁護士と相談を重ね、起業への不安を一つずつ解消していきました。
開業に当たっては、創業助成金、融資の申請やクラウドファンディングにも挑戦しました。コロナ禍の影響もあり迷いもありましたが、仲間と力を合わせ、「和文化を世界に伝えたい」「女性の夢の実現を後押しする存在になりたい」という信念を胸に、rojicoyaをオープンすることができました。
現在は、侍体験や書道・華道・三味線などの教室、落語会を開催し、国内外の方々に和文化の魅力を届けています。特に欧米豪の観光客には侍体験が人気で、「日本に来て一番感動した」との声をいただくたび、とてもうれしく思います。
23年には足立区インバウンド推進協議会を設立しました。行政や企業などと連携して、地域資源を活用した企画を展開し、BtoB案件も増えています。今後は和文化プロデュースにも注力し、日本各地の魅力ある伝統を未来へつなぐお手伝いをしたいと考えています。
文化の違いは壁ではなく、新たな感動を生む力です。これからも伝統に感謝と尊敬を込めて、誇れる日本文化を世界へ発信するため、学び、体験し、継承する場を提供し続けてまいります。
会社データ
社名 : 路地裏寺子屋 rojicoya(ろじうらてらこや ろじこや)
所在地 : 東京都足立区千住旭町36-1
電話 : 03-6812-0780
創業 : 2020年
事業概要 : 飲食・イベント事業・観光業(インバウンドコンテンツ造成、和文化体験事業、まちおこし事業)
HPはこちら : https://rojicoya.jp/
※月刊石垣2025年5月号に掲載された記事です。