皆さんの会社を支えている世代はおそらくミレニアル世代(Y世代とも呼ばれ、現在29歳~44歳くらい)だと思います。以前もここでお伝えさせていただきましたが、ある統計によると、この世代は「会社で出世したい」と考えている人は全体の23%くらい、後の人は「仕事よりもプライベートを充実させる」ことの方が大切だと考えているのだそうです。「成功して家族を幸せにしたい」というビジネスマンは少数派なのです。
前にも触れましたが、経営者はこの事実を嘆く必要はありません。組織としては23%の人が頑張って会社を引っ張ってくれて、77%の人はコツコツと決まった仕事をこなしてくれれば、それでいいのですから。
ただ、ミレニアル世代に一つ気になることがあります。それは転職に対する抵抗が少なく、転職を前向きな行動として受け取りがちな傾向です。リスキリングを支援する動きや、昨今のネットやテレビCMの転職を後押しするムードも手伝って、転職はキャリアアップや自己成長の手段という考え方が広がっています。
この風潮は77%の社員だけでなく、会社の将来を背負って立つ23%の社員にも同じく浸透していますから、経営者にとっては由々しき問題です。
そこで今回は、転職予防のためのトップの重要なスキルをお伝えしようと思います。
ビジネスの重要なコミュニケーションとして、「対話」「討論」「会議」がありますが、今回重要なのは「対話」です。私が言う「対話」とは、一対一で社員の話をさえぎらず聞くことです。この時に、批判や説教はしないでください。
船井総研の副社長をしていた2年間というもの、私はできる限り時間をつくり当時の社員287人全員と約40分「対話」して、細かくノートを取りました。
この「対話」を通じて、部下を何人持たせられるか?など、話を聞きながら社員を採点する部分もありましたが、個人の趣味などプライベートな面について初めて知ることができました。「対話」する前と後では、社員と私の関係がグッと近くなり、年に数回も顔を合わせない、目礼するだけだった間柄の社員にも、声掛けできるようになりました。
ミレニアル世代は社内評価や報酬だけを目的としておらず、自己実現感や達成感を大切にし、多様性を重視するが故にそれを阻む企業風土を嫌います。また、会社や自分の仕事が社会にどのような貢献をしているのか、社会的意義を重視します。
「対話」によって、社員が何を大事に思っているかを知ることは、社員とトップが見えない糸でつながるということです。私は飲みニケーションよりも「対話」こそが重要と思っています。