「潤水都市さがみはらフェスタ」は、相模原商工会議所青年部(以下、相模原YEG)が挑戦と革新を重ね、2010年より地域とともに創り上げてきた市民参加型の大型イベントである。コロナ禍で多くのイベントが中止された時期においても、運営メンバーはその活動を絶やさずに続けてきた。地域経済の活性化やシビックプライドの醸成にもつながるこの祭典の舞台裏を取材した。
常に成長しながら継続していく覚悟
「潤水都市さがみはらフェスタ」は、相模原市が2010年に政令指定都市へ移行したのを契機に、同市主導で始まった大型市民イベントである。相模原YEGは発足当初から企画に参画していたが、近年では相模原YEGが主体となって企画・運営の全てを担い、地域の活力を象徴する祭典へと成長している。
20年度は新型コロナウイルスの影響で多くのイベントが中止され、フェスタも屋外開催が困難な時期だったが、決してそのともしびを絶やさなかった。地元テレビ局との連携やオンライン配信を駆使し、地域のにぎわいを画面越しに伝えるという新たな取り組みに挑戦した。これにより、会場に足を運べない市民にも相模原の魅力を発信することができた。環境の変化に柔軟に対応することで継続できたこの経験は、イベントの多様な可能性を広げ、今後の地域活動の運営における貴重なモデルケースとなった。
この過程で相模原YEGは「常に挑戦して、継続していく」という強い覚悟の下、従来型のイベント開催にとらわれない柔軟な発想を磨いていった。制約の中でこそ生まれる創意工夫が、フェスタの未来に新たな可能性を切り開いたのである。コロナ禍を経た今、得られたノウハウと経験は、今後の不測の事態にも対応できる地域イベント運営の礎となっている。
現にフェスタは「変化」を恐れず、年ごとに新たな挑戦を続けている。22年に始まった「サガミハランタン」では、LEDライトを内蔵したランタンを、夜空に一斉に浮かべる幻想的な演出が話題となった。子どもから大人までたくさんの市民が協力して600基のランタンを浮かべて、夜の会場を彩るアートとして多くの感動を生んだ。一つひとつのランタンにはみんなの思いや願いのメッセージが書かれており、地域の人々が一体となって創り上げた光の景色は、訪れた人々の記憶に深く刻まれている。
進化するフェスタは構築した信頼関係の証し
市制施行70周年を記念した24年度のフェスタは過去最多になる1400万円の協賛金を集め、15 haの土地を借りて、延べ6万人以上の来場者を動員する大規模な開催となった。1人当たりの平均使用単価を基に推定された経済効果は約3億円にも上り、地域経済の活性化と市民の関心喚起に大きく貢献した。こうした企画力・実行力、そして資金調達力は、相模原YEGが地域との間に築いてきた確かな信頼関係の証しである。
また、特別な試みとして「さがみアンブレラブロッサム」が初登場。この企画は、日本商工会議所青年部の全国大会(小松大会)で見られた装飾演出から着想を得て、色とりどりのビニール傘約500本を天井からつるして展示。内側にLEDライトを仕込むことで、日中は華やかでポップなアート作品として、夜間は一変して幻想的な光景が楽しめる仕掛けとなり、会場一体が“空を見上げる芸術空間”に変貌した。これらの試みは単なる装飾にとどまらず、まちづくりへの思いを象徴する取り組みとなった。
フェスタの運営体制は、年齢や経験に関係なくメンバーが挑戦できるフラットな組織構造が特徴だ。若手メンバーも企画に積極的に関与し、自由な発想と行動力を発揮することで、地域に新たな価値を生み出している。
一連の活動を通して育む 強固なシビックプライド
相模原YEG会長の東正充さんは、「毎年おのおのの担当者が『チャレンジ精神』と『前年度を超える企画』を信念に、一貫して取り組んでいる。これらの活動は、相模原のシビックプライドとシティーセールスを常に意識しながら展開されており、まちの魅力を内外に広く発信する原動力となっている」と語る。
このような継続的で創造的な取り組みによって、フェスタは単なるイベントにとどまらず、「永続事業」として地域に根付きつつある。そこから育まれるシビックプライドは、住民が自らのまちに誇りを持ち、他の地域に対しても積極的に魅力を発信するシティーセールスの基盤を築いている。都市と自然が融合する相模原だからこそ実現できる、魅力あるまちづくりが相模原YEGの手で進められ、その歩みは、地域の新たな可能性を切り開く原動力となっていくだろう。
【 相模原YEG 】
会 長 : 東 正充
会員数 : 99人
創 立 : 1968年
スローガン :「一歩の勇気~心ユサブレ、夢をツラヌケ、次代へススメ~」
HP:http://www.s-yeg.gr.jp/
編集後記
高橋佳孝(松戸YEG)
相模原YEGの魅力は、毎年開催されているフェスタが「恒例」にとどまらず、新たな挑戦の場になっていることです。「より良いまちおこしを」「昨年より盛り上げたい」との熱い思いを持つメンバーが、仲間であり良きライバルとして事業を築いています。
東会長は毎年、来場者の笑顔を見るのが楽しみで、全力を尽くしているそうです。地域に根差した情熱が、相模原の未来を着実に形づくっていると感じました。
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報委員会 石垣チーム/写真提供:相模原商工会議所青年部

