先日、熊本で開催されたグロービス主催のビジネスリーダーサミットに参加しました。地方創生、ベンチャー、エンタメとテーマ別に興味深い分科会が企画されていましたが、参加の目的である半導体産業の誘致に関する分科会をセレクト。大いに刺激的な話を聞くことができました。
人口増で活況も 交通渋滞が問題に
台湾の巨大半導体企業TSMCが2024年、熊本県内の人口4.3万人の菊陽町に進出。シリコンアイランドとして熊本はアジアのダイナミックなテック産業エコシステムに組み込まれ、大きなチャンスを迎えることになりました。周辺地域に対する投資額は数兆円。国内外から菊陽町周辺に技術者が大量に移住、さらに半導体周辺企業も工場を新設し、人口増でまちの景色が一変しました。この変化を好機と捉え、持続的な成長につなげるためには何が必要か。熊本、ひいては九州がアジアのテックハブとなるための道筋などの議論が繰り広げられました。そんな議論を聞きながら、気になったのはまちの変化で生じた社会問題です。
討議の後半で話題に出ましたが、町民は交通渋滞に悩まされ、困っているようです。人口増加と物流の活性化で交通渋滞が発生し、なんと、熊本は渋滞による各自の年間損失時間が世界5位。もちろん日本ワーストです。熊本市中心部の平均速度は時速16.1キロメートルで三大都市圏(東京・大阪・名古屋)を除く政令市の中でワースト1位。さらに菊陽町と熊本市内の渋滞はひどく、頻繁に「動かない」状況になり、生活道路も渋滞に巻き込まれ、生活に支障が出つつある状況です。
ソーシャルビジネスに期待
さらに半導体製造で大量に使われる水が生活用水の枯渇や水質汚染に影響するのでは?という不安の声が上がっているとのこと。こうした社会問題について、ビジネスで解決すればいいという動きが出てきています。
こうしたアプローチはソーシャルまたはコミュニティービジネスと呼ばれ、地域コミュニティーの活性化や雇用創出の貢献にも寄与し始めています。例えば、熊本の大交通渋滞という社会問題の解決のため新たな交通手段として空飛ぶ自動車=エアモビリティーを活用。そのためにポートと呼ばれる発着場を整備して、新たな移動手段を活用したビジネスに取り組むといった動きがあります。あるいは日本各地で起きている高齢化・過疎化の問題解決に向けて「見守り・配食ビジネス」が立ち上がり、雇用の増加が起きたケースは幾つも出ています。
一方で社会問題は都市圏と地方との格差、コミュニティーの希薄化や社会的孤立など増えるばかり。ビジネスで解決していかない限り、持続可能な状態は難しいのではないでしょうか?
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)