11月15〜26日に東京2025デフリンピックが開催され、世界から聴覚に障がいがあるアスリートが集う。初の東京大会を応援すべく、障がい者に寄り添い一緒に働く企業の取り組みを紹介したい。
*デフ(Deaf)とは、英語で「耳がきこえない」という意味。第1回デフリンピックは、1924年にフランスのパリで開催された。東京2025デフリンピックは、100周年の記念すべき大会であり、日本では初めての開催になる。
地域のインフラを支える企業哲学と障がい者も働きやすい家族的な社風
神奈川県横須賀市にある東建設は、地域密着型の建設会社である。同社には、2人の障がい者が長年在籍しており、1人は40年以上のキャリアを持つベテランだ。同社が創業時から大切にしてきたのは「足りないものはみんなで協力してカバーする」という、家族のような社風である。この社風は、障がい者雇用においても自然な形で実践されており、昨年4月には神奈川県産業労働局より「かながわ障害者雇用優良企業」として認証された。
「適材適所」が実現する仕事の在り方
1946年に創業し、50年に法人化された東建設は、道路舗装を事業の柱とし、施工に必要な機械を自社で保有し、高い機動力を誇る。地域の道路インフラを支える存在として、行政からも厚い信頼を寄せられている。同社には、2人の障がい者が在籍しており、1人は手の指に欠損があり、もう1人は聴覚障がいがある。同社では、それぞれの障がい特性に合わせた配属を徹底している。
手の指に欠損がある社員は、勤続40年以上のキャリアを持つベテランである。現在は、工具などのメンテナンスや整理業務を主に行っているが、過去には健常者と同様に、重機の操作や舗装工事もこなしていた。
「彼は若い頃、現場に出て働いていました。本人の努力もありますが、スコップを握れないわけではないですし、力の入れ方が多少違うだけで、健常者と変わりません」と語るのは、同社の二代目社長で、現在は会長を務める小池克彦さん。彼の真面目な働きぶりを高く評価している。
聴覚障がいのある社員は、2012年に協力会社から社員として迎え入れられた。彼は現在、主に道路のメンテナンスや維持工事のチームに所属している。
「道路の舗装工事全般において、重機や大型車が行き交うため、クラクションなどの音で危険を察知するのが一般的です。しかし、メンテナンス工事は特に決められたチームで行うため、お互いに注意を払いながら作業を進めることができます。チームのメンバーは、身振り手振りで意思疎通を図るなど、工夫をしながら作業しているので、これまで大きなトラブルはありません。本人の努力もあって、今では彼自身が状況を見て、自ら判断するようになってきました」と小池さんは語る。
同社では、障がいがあるからといって特別扱いすることはなく、できる仕事とできない仕事を明確に分け、できる範囲で最大限のパフォーマンスを発揮できるよう配慮している。この「適材適所」という考え方が、安全を確保しつつ、彼らが長年にわたり働き続けられる秘訣(ひけつ)である。
