鳥取砂丘、因幡の白うさぎ伝説で有名な鳥取市。「星取県」の愛称の通り星空も美しく、鳥取商工会議所青年部(以下、鳥取YEG)の提言を基に、2017年には鳥取県星空保全条例が制定されている。そんな同市の象徴となるような史跡に、日本100名城にも数えられる「鳥取城跡」がある。市内外への知名度向上に課題が残る中、鳥取愛と誇りを胸に日本唯一のにぎわいをつくり出そうと、お城を軸にした活動で奮闘する鳥取YEGの思いを取材した。
担当委員会は「お城」専門 城跡での事業でまちを動かせ
今年7月。雲の切れ間からのぞく日差しが肌を焼く。昼過ぎには30度を超えようかという気候の中、250人を超えるボランティアが鳥取城跡に集まった。いくつかのエリアに分かれて草刈りやごみ拾いを行う中、参加した中学生たちから「お城って初めて来たかも」「うそ、小学校の遠足で来たじゃん」という会話が聞こえてくる。即席の“おそうじ隊”は暑さに負けず、お城と縁を結びながら地域貢献に精を出した。
鳥取YEGには、地域活性化を担当する委員会が二つある。中心市街地を担当するまち興し委員会と、鳥取城跡エリアを担当する鳥取お城委員会だ。中でも、鳥取城復元に向けた城跡エリア事業の一つである「鳥取城跡おそうじ隊」は、清掃ボランティア以外にも例年9月に開催する「鳥取三十二万石お城まつり」の時代行列への参加とYEGブースの設置と併せて、鳥取城跡を市内外に周知する活動に取り組んでいる。
24年度には「お堀の水ぜんぶ抜く大作戦」と題して、鳥取YEGが、池の水を抜く全国ネットのバラエティー番組を誘致。鳥取城跡のお堀をテレビで取り上げてもらうことに成功した。行政各部署、地元関係団体、学校、テレビ局など多くの関係者を巻き込むことで、鳥取YEGだけではなし得ない大規模な事業を実現してきた。このような積極的な取り組みにより、鳥取市民にとって鳥取城跡が身近で誇れる存在になりつつある。
先輩からのバトンを胸に25年間活動を続ける
地域振興の委員会は日本中に数あれど、お城に特化した委員会は聞いたことがない。24年度鳥取お城委員会の河田圭太委員長は、鳥取YEGが本格的に鳥取城に関わり始めたきっかけについて「01年の『第2回鳥取三十二万石お城まつり』に参画したことです」と語った。鳥取YEGは、行政や地域住民を巻き込みながらお城まつりに参画し続け、お城まつり実行委員会の代表を鳥取YEGのOBが務めるようになるほど関係が深い。
鳥取YEGは、21年度に鳥取城跡ならびに周辺市街地の整備と鳥取城を象徴する建物であった二ノ丸三階櫓(やぐら)の復元を内容とする政策提言を行った。その結果、鳥取市の深澤義彦市長が二ノ丸三階櫓復元の早期実現を目指すと述べた。21年9月に催されたお城まつりでは、仮設の三階櫓が19年ぶりに設置された。こうして市民の機運が高まってきたところで、23年に、満を持して「鳥取お城委員会」を立ち上げたのだ。
同市が鳥取城跡の復元に前向きになったのは、鳥取YEGの長年の努力のたまものであろう。しかし、メンバーも最初から鳥取城跡への理解と愛着を持っていたわけではない。鳥取お城委員会を担当する鳥取YEGの下園裕樹副会長も「鳥取YEGに入るまでお城のことはほとんど知りませんでした。委員会ができて勉強するうちに、市民に興味を持ってもらいたいと思うようになりました」と賛同した。そういった先輩の思いを紡ぎ、メンバーは今年もお城まつりで汗をかく。
