日本商工会議所第141回通常会員総会の開催をお喜び申し上げます。
大阪・夢洲で開かれている大阪・関西万博も、あと25日になりました。
1970年、鳥取の中学校2年生だった私は、ディーゼル特急に乗って5時間かけて大阪万博に行き、3時間並んで月の石を3分見ました。あの頃の日本は、今よりも貧しかったかもしれない。でもすごく活気があったと思います。70年代、80年代、90年代、日本はまさしくピークでした。1994年、世界のGDPに占める日本の割合は18%でしたが、現在は4%を切りました。米国の貿易赤字は、かつて7割が日本の貿易赤字でしたが、今は5%です。数字とすれば、そういうことだということをよく認識をしなければなりません。
人口減少は恐ろしい脅威です。あと80年経つと日本人は半分になるといわれています。これは日本、韓国、シンガポールの3カ国に共通した現象ですが、なぜこんなことになったのか「検証や反省なくして、新しい未来はない」と考えています。
今年の2月、ホワイトハウスで米国のトランプ大統領と長い時間会談しました。トランプ大統領の主張はとにもかくにも「貿易赤字を減らせ」ということでしたが、貿易赤字を減らすのは一つの手段であって、トランプ大統領の目的が、いかにして米国にもう一度、忘れ去られた人々に雇用を取り戻すか、いかに製造業を復活させるかであるとするならば、大事なのは関税よりも投資です。日本の技術、資金、そして米国の労働力を組み合わせることによって、新しい産業をつくり、世界に貢献することです。
対米輸出品目は自動車やその関連だけではありません。全国あまたの中小・中堅・小規模事業者がいて、お客さまが来てからご相談に応じましょうということでは、行政とはいえません。こちらからまず把握し、いかにして応えるか。同時に、いかにして内需を喚起し、対米貿易がある程度減るとするならば、東南アジアをはじめとして、どれだけ世界に向けて輸出を増やしていくかを考えていくことが重要だと、私は考えています。
人口・面積において日本よりも小さいドイツが、なぜ日本よりもGDPが上になったか。それはあくまで「Made in Germany」にこだわるということと、安売りはしないということ、そして、中小企業などの輸出の割合が日本よりはるかに高いということです。なぜドイツにできることが日本にできないか。これは地方創生にも通じる話ですが、「やりっぱなしの行政」「頼りっぱなしの民間」「全く無関心の市民」、これが三位一体になったときに必ず失敗します。これらをどうやって克服するかは喫緊の課題であり、このまま放っておくと「本当に日本はなくなる」という危機感を私は持っています。
賃金についてですが、地域別最低賃金は全国加重平均1121円で、引き上げ額66円は史上最大となりました。そして実質賃金も7カ月ぶりプラスに転じました。良い話ではありますが、「防衛的賃上げはいつまで続くのか」という話になります。しかし、そこで終わっていたら何も前に行かないと私は思っています。
今、最低賃金あるいはその近くで生活している人が660万人いて、一生懸命働いても暮らしていけないという方々が全ての労働者の10分の1いるという事実を直視しなければなりません。
どうすればそういう方々の賃金が上がるか、そのために行政は何をすべきか。これは国家の存亡がかかっていますので、経済産業省を中心として、省力化など、政府として皆さまに何が一番プラスなのかということをきちんと把握をした上で、全身全霊で支援してまいります。
この国は「地方あっての日本である」という思いをもう一度取り戻したいと思っています。わが国が、地方から、民間から、新しい日本をつくる、その思いを一つにする総会となることを心から祈念を申し上げ、会員各位、そしてまた、従業員の皆さま、ご家族の皆さま のご健勝、ご発展を心から祈念してごあいさつといたします。ありがとうございました。
