はじめに
経済産業大臣の武藤容治です。日本商工会議所第141回通常会員総会、ご盛会誠におめでとうございます。
経済の現状認識と今後の方向性
石破政権では、「賃上げと投資がけん引する成長型経済」の実現を掲げ、物価高に負けない賃上げや、国内への成長投資が進む環境をつくることが最重要課題として、経済政策を進めてまいりました。
今年の春季労使交渉では、昨年をさらに上回る高水準の賃上げ率となり、最低賃金も歴史的な高水準となりました。半導体やGXなどの大型の国内投資も進みつつあります。
この流れをより多くの地域に広げるため、地域における先進的なGXの取り組みを応援すべく、「GX戦略地域」を新たに創設しました。選定された地域には、国家戦略特区とも連携し、支援と規制・制度改革を一体で措置してまいります。
一方で、地域や規模によって、賃上げや投資には、ばらつきがあります。人手不足により、防衛的な賃上げを迫られる厳しい状況に置かれた中小企業が多くいらっしゃることも承知しています。米国による関税措置や最低賃金の影響で、経営の先行きに不透明感や不 安を感じておられる企業の声も多くお聞きしています。
8月に、石破総理のご指示を受けて、政府全体で延べ1万を超える全国各地の事業者の方々と、米国の関税措置の影響について、集中的に意見交換させていただきました。
その際にお聞きしたご意見の中には、関税を価格に転嫁できるかどうか、転嫁した場合に販売や売り上げが減少するかもしれないといった懸念や、賃上げを継続できるか不透明であるとの声が、多くありました。一方で、新規市場の開拓や、付加価値が高い商品の開発などに挑戦していこう、という意気込みもお聞きすることができました。
こうしたご意見も踏まえ、①賃上げや投資に必要な原資を確保していただくこと②「稼ぐ力」を高める方法に気付いていただき、実践する仕組みを強化すること――がさらに重要になっていると考えています。政府として重点的に進めていることを三つ申し上げます。
第一に、これまでも粘り強く続けてきた、価格転嫁・取引適正化の取り組みをさらに徹底していきます。下請法が改正され、協議に応じない価格決定や手形払いが禁止されることになります。法律の名称も、「中小受託取引適正化法(略称:取適法)」に変更されます。
また、下請振興法も改正され、名称も「受託中小企業振興法(略称:振興法)」になります。複数の取引段階にある事業者による振興事業計画に対する承認・支援を通じて、サプライチェーン全体での取引適正化の取り組みを促してまいります。これらは来年1月1日から施行されます。公正取引委員会と一緒になって、厳正な執行を行ってまいります。さらに、価格交渉・転嫁の状況や支払い条件の実態に関する調査を今後も継続し、発注者リストの公表や大臣名での指導・助言などを粘り強く行ってまいります。
第二に、生産性向上のための各種補助金について、関税や最低賃金の影響を受ける事業者の方々に対しては、要件緩和・優先採択を講じ、より活用していただけるようにしてまいります。
第三に、商工会・商工会議所の皆さまによるプッシュ型の働き掛け、よろず支援拠点などによる伴走支援を、これまで以上にきめ細かく行ってまいります。こうした伴走支援をより充実させるための予算も来年度の概算要求に盛り込みました。
引き続き、皆さまから現場の実態をお伺いしながら、施策を充実させてまいりたいと思います。ご協力をお願い申し上げます。
万博について
大阪・関西万博は、おかげさまで来場者数が2千万人を超え、まだ油断はできないものの黒字化も見通せるようになりました。これまで、博覧会協会へのスタッフの派遣やチケット購入など、さまざまなご支援をいただいたことに改めて感謝を申し上げます。
残り1カ月弱、最後まで、来場者の皆さまに安全に楽しんでいただけるよう運営に当たり、成功裏に閉会式を迎えられるよう尽力してまいります。万博のレガシーについての議論も、ステークホルダーの皆さまと進めてまいります。
おわりに
これらの政策を進めていくためには、会員企業の皆さまのご協力が不可欠です。引き続きお力添えいただけるよう、お願い申し上げます。
結びになりますが、日本商工会議所ならびに各地の商工会議所のさらなるご発展とご健勝を祈念し、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。
