「毎月花火が打ち上がるまち」として、全国にその名を知られる秋田県大仙市。中でも夏の夜空を彩る全国花火競技大会「大曲の花火」は、全国から見物客が訪れ、地域に活気をもたらすかけがえのない財産となっている。この大切な宝を次世代へと継承するため、大曲商工会議所青年部(以下、大曲YEG)は、子どもたちへの啓発に情熱を注いでいる。花火大会の持続可能な発展を目指すとともに、子どもたちが地域の未来を築くために続けている活動を取材した。
メンバーが子どもたちに伝える花火の魅力
大曲YEGは、地元の小学生に「大曲の花火」の魅力を深く知ってもらうため、独自の活動「“大曲の花火”推し」を実施している。今年は6月9日に実施し、大曲小学校の体育館に、大曲、四ツ屋、花館、東大曲の四つの小学校から、総勢260人の4年生が期待に満ちた表情で集まった。授業は、花火の歴史から製造、そして大会運営に至るまで、多角的に花火の魅力を紹介する三部構成で行われた。
第一部では、花火創造企業の最上谷友宏さんが、花火の歴史を紹介した。日本では古来より花火の原料となる火薬がつくられており、戦国武将の伊達政宗が日本で初めて外国産の花火を観賞したことがきっかけで、国内でも観賞用花火が広まったことが語られると、子どもたちからは驚きの声が上がった。また、江戸時代には花火玉の中に290個もの星(火薬の粒)が配置されたという最古の文献も紹介された。
続く第二部では、響屋大曲煙火の今野祥さんが、花火玉の製造と打ち上げの舞台裏について講演。直径1mの大きな花火玉が1日に1個しかつくれないことや、火薬を扱う危険な作業であること、そして安全に対する徹底した配慮が求められることなど、普段知られることのない花火師の苦労や情熱について語った。美しい花火の裏で、多くの人々の努力や熱意が込められていると気付かされる一端だ。
そして、第三部では大曲YEGのメンバーが、花火大会の運営について解説。2000人ものスタッフが70項目もの安全基準を守って運営されていることや、日本が世界で唯一“五重丸(四重芯(よえしん))”以上の花火を製造できる国であることなど、花火の奥深さを伝えた。質疑応答の時間には多くの質問が寄せられ、大曲YEGまちづくり委員会委員長の草薙(くさなぎ)渉さんは、「子どもたちの花火に対する強い関心がうかがえました。『真剣に聞いた』という児童の感想も聞かれ、子どもたちの心に深く響いたことを確信できました」と語った。
10万人の来場者への“おもてなし”と“花火への誇り”
今年8月30日の花火大会当日。全国各地から訪れる来場者へのおもてなしと安心・安全な大会を円滑に運営するため、大曲YEGは長さ約1・6㎞ある河川敷内会場の入口各所で活動した。前夜に雨が降ったため濡れてしまったテーブルやイスの拭き取り清掃から始まり、開場後は会場内外の案内、迷子や落とし物、急病人への対応などを行った。また、地元の名産品や「大曲の花火」グッズなどの販売を通じ、来場者へ地域の魅力を発信した。
