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IT人材 「大幅に不足」29・5% 「IT人材白書2018」(概要) 〝質〟の向上が今後の鍵 IPA

[図1]特性の違いに夜IT事業・IT業種の分類

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)はこのほど、「IT人材白書2018」を公表した。同白書はIT人材を取り巻く環境や動向などの把握を目的に、2008年から毎年実施している「IT人材動向調査」の結果を取りまとめているもの。最新の2017年度調査を分析した2018年版白書では、IT企業におけるIT人材の〝量〟に対する不足感について「大幅に不足している」との回答が過去最多の29・5%となった。一方〝質〟の不足感については、知識や経験を得やすい企業文化や風土などが、その緩和に効果的であるとしている。特集では、同白書(2018年版)の概要を紹介する。

1.デジタル変革時代におけるIT事業・IT業務とIT人材の現状

特性別で見るIT事業・IT業務

第4次産業革命の進展に伴い、企業活動や社会生活のあらゆる場所においてデジタル化の流れが起こっている。IT人材の多くを占める「実務者層」は重要な役割が期待される。

企業においてこれまで主流であったIT活用は、業務の効率化やコスト削減が主な目的であった。

一方、デジタル化におけるIT活用は、ビジネスを創出し、新しい仕事や価値を次々に生み出していくことが目的となる。この2種類のITにかかわるIT人材には、それぞれ異なる能力が求められ、異なる育成や獲得方法、異なる処遇などが必要となる可能性がある。

2017年度調査では、〝課題解決型〟と〝価値創造型〟の2種類の概念でIT企業のIT事業、ユーザー企業のIT業務を分類し、調査を行った。(図1)

IT企業のIT事業の現状

IT企業に〝課題解決型〟〝価値創造型〟のIT事業規模の拡大・縮小傾向について尋ねたところ、〝価値創造型〟の方が〝課題解決型〟より拡大の割合が高くなっている。〝課題解決型〟は縮小の割合が1割程度ある。従業員数規模で見ると〝課題解決型〟の拡大は1000人以上で2割弱と少なく、〝価値創造型〟では1000人以上で6割台半ばと多い。

ユーザー企業のIT業務の現状

ユーザー企業に〝課題解決型〟〝価値創造型〟のIT業務の拡大・縮小傾向について尋ねたところ、〝価値創造型〟の方が〝課題解決型〟より拡大の割合が高くなっている。〝課題解決型〟の拡大は300人以下で3割台半ば、〝価値創造型〟では1000人以上で6割台半ばである。

特性別におけるIT人材の増減

〝価値創造型〟と〝課題解決型〟のそれぞれのIT事業・IT業務におけるIT人材の増減を尋ねたところ、いずれの企業でも、〝価値創造型〟にかかわるIT人材が「増加」している割合は、〝課題解決型〟にかかわるIT人材が「増加」している割合を上回っているが、ユーザー企業の方が大きく上回っている。

特性別にかかわるIT 人材の〝質〟の不足感

〝価値創造型〟と〝課題解決型〟のそれぞれのIT事業・IT業務におけるIT人材の〝質〟の不足感について尋ねたところ、「大幅に不足している」と答えた割合は、〝価値創造型〟のIT企業で3割強、ユーザー企業で4割台半ばになり、〝課題解決型〟より上回っている。(図2)

特性別に人材に求められる〝質〟の選択肢(略)

特性別IT人材に求められる〝質〟の違い(実務者層)

(IT企業)

特性別で〝質〟が「大幅に不足している」と回答したIT企業の実務者層に求められている〝質〟を示すと、〝価値創造型〟では「独創性・創造性」と「新しい技術への好奇心や適用力」が求められている。

〝課題解決型〟では「IT業務の全般的な知識・業務ノウハウ」と「IT業務の着実さ・正確さ」が求められている。

(ユーザー企業)

特性別で〝質〟が「大幅に不足している」と回答したユーザー企業の実務者層に求められている〝質〟を示すと、〝価値創造型〟では「独創性・創造性」と「新しい技術への好奇心や適用力」が求められている。

〝課題解決型〟では「IT業務の全般的な知識・業務ノウハウ」と「IT業務の着実さ・正確さ」が求められている。

特性別IT人材に求められる〝共通な質〟(実務者層)

〝価値創造型〟と〝課題解決型〟で共に不足感が高かった〝質〟、すなわちIT人材の実務者層に共通して求められている〝質〟について、IT企業とユーザー企業は「高い技術力(IT)」「IT業務の全般的な知識・業務ノウハウ」「自発的に動く力」の不足感が高く、IT人材の実務者層の全てに共通して求められる〝質〟だと考えられる。(図3)

IT人材が目指すべき姿とは

〝課題解決型〟のIT人材は、既存の事業を円滑に進めていく上で依然として重要であることは変わりない。デジタル化においては〝価値創造型〟のIT人材がけん引役となって方向性を決定していく役割を担い、〝課題解決型〟のIT人材は推進する力となる。〝価値創造型〟のIT人材と〝課題解決型〟のIT人材が手を組んで両輪をバランス良く回すことが必要である。IT人材はSociety5・0を実現する大きな力であり、根幹を支えるものである。

2.企業文化や風土とIT人材の〝質〟の関係

人材の〝質〟向上にかかわる企業文化・風土(略)

IT人材の〝質〟の向上のための施策(略)

自社の企業文化や風土に当てはまるもの

IT企業とユーザー企業に自社の企業文化や風土について尋ねたところ、各社さまざまな企業文化や風土がある中、(中略)「社内の風通しがよく、情報共有がうまくいっている」「自社のビジョンや価値観が従業員に行き渡っている」「お互い成長する・学び合う、育てる、助け合う土壌がある」が、それぞれ高くなっている。

企業文化や風土とIT人材の〝質

(IT企業)

IT企業におけるIT人材の〝量〟と〝質〟の不足感を風土点の点数別に比較したところ、〝量〟については、明確な傾向は見られない。〝質〟については、風土点が高くなるに従い、「大幅に不足している」割合は低くなり、「特に不足はない」割合が高くなる傾向が見られる。これまで、IT人材の〝量〟の不足感と〝質〟の不足感は似た傾向を示すと考えられていたが、風土点との関係性を見ると異なった傾向を示すことが分かった。

(ユーザー企業)

ユーザー企業におけるIT人材の〝量〟と〝質〟の不足感を風土点の点数別に比較したところ、〝量〟については、明確な傾向は見られない。〝質〟については、風土点を除き、風土点が高くなるに従い、「大幅に不足している」割合が低くなり、「特に不足はない」割合が高くなる傾向が見られる。

〝質〟の向上のための施策の効果

〝質〟の向上のための従業員満足度、モチベーション向上などに関する会社の取り組みは重要であると認識し、施策を実施しているIT企業、ユーザー企業それぞれにその効果について尋ねたところ、いずれの企業でも、「実力に応じた待遇(年齢や勤続年数によらない抜てきなど)」「自己啓発支援(費用補助、学ぶ場と機会の提供など)」の効果が高くなっている。

〝質〟の向上のための施策の実施数

従業員満足度・モチベーション向上などに関する施策の実施数を風土点別に比較したところ、いずれの企業でも風土点が高くなるに従い、施策の実施数が多くなる傾向であることが分かった。

企業文化や風土と人材育成施策などの関係

現在進行しつつある第4次産業革命下では、IT人材に高い能力やスキル転換が求められるようになる。また、当面はIT人材の〝質〟不足も大きな課題である。そのため、人材の「意欲・モチベーション向上」を引き出すような企業文化・風土の醸成、IT人材戦略の策定、モチベーション向上のための施策を実施し、個々の人材の自律的な成長を促し、IT人材の〝質〟を上げることで、さまざまな課題の根幹的な解決にもつながることが期待される。

3.IT人材の〝量〟と〝質〟の経年変化

IT人材の〝量〟に対する過不足感【過去11年の変化】(IT企業)

IT企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感について11年間の変化を見ると、IT企業では、2015年度まで高まり続けていたIT人材の〝量〟に対する不足感の高まりが2016年度はやや緩和したが、2017年度では過去11年で一番「大幅に不足している」割合が高くなった。(図4)

IT人材の〝質〟に対する過不足感【過去11年の変化】(IT企業)

IT企業におけるIT人材の〝質〟に対する不足感について11年間の変化を見ると、IT企業では、「大幅に不足している」が2008年度で3割強と最も高い。IT人材の〝質〟に対する不足感は2016年度にやや緩和したが、2017年度ではやや高まった。(図5)

IT人材の〝量〟に対する不足感の2016年度からの変化(IT企業)

IT企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感について、2016年度と比較した場合の変化を尋ねたところ、従業員数規模が300人以下の企業では、2016年度と比較して「不足感が高まった/過剰が弱まった」とする割合が5割台半ばと高くなっている

IT人材の〝量〟に対する過不足感【過去10年の変化】(ユーザー企業)

ユーザー企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感の割合を経年で見ると「大幅に不足している」とする割合は、年々高くなる傾向にあり、2017年度が過去10年で最も割合が高くなった。

IT人材の〝質〟に対する不足感【過去10年の変化】(ユーザー企業)

ユーザー企業におけるIT人材の〝質〟に対する過不足感の割合を経年で見ると「大幅に不足している」は、2014年度より3割強で変化はない。

IT人材の〝量〟に対する不足感の2016年度からの変化(ユーザー企業)

ユーザー企業におけるIT人材の〝量〟に対する過不足感について2016年度と比較した場合の変化を尋ねたところ、従業員規模が大きくなるに従い「不足感が高まった/過剰が弱まった」とする割合が高くなっている。

ネットサービス実施企業のIT人材の〝量〟と〝質〟

ネットサービス実施企業におけるIT人材(ネット系)の〝量〟に対する過不足感、〝質〟に対する不足感について、2015年度からの3年間で尋ねたところ、2017年度は〝量〟〝質〟共に不足感が増している。

IT人材の女性割合(IT企業)

IT企業の女性割合について2015年度からの3年間の変化を見ると、正社員のIT人材における女性の割合は年々増加する傾向にある。(図6)