総務省はこのほど、65歳以上の高齢者の就業状況などについて取りまとめた「統計から見たわが国の高齢者」を公表した。2017年の高齢者の就業者数は、14年連続で増加し、807万人と過去最多となった。また、15歳以上の就業者総数に占める高齢者の割合は、12・4%でこちらも過去最高となった。本稿では、その抜粋を紹介する。
1.高齢者の人口
総人口の28%に
わが国の総人口(10月1日現在)は、2005年に戦後初めて減少した後、08年にピークとなり、11年以降、継続して減少している。18年9月15日現在の推計では1億2642万人と、前年(1億2669万人)と比較すると27万人の減少となった。
一方、65歳以上の高齢者(以下、高齢者)人口は、1950年以降、一貫して増加し、2012年に3000万人を超えた。18年9月15日現在の推計では3557万人と、前年と比較すると44万人の増加となっている。
高齢者人口を男女別に見ると、男性は1545万人、女性は2012万人で、女性の高齢者人口が初めて2000万人を超えた。
総人口に占める高齢者人口の割合は28・1%となり、前年(27・7%)と比較すると、0・4ポイント増と、過去最高となった。男女別に見ると、男性は25・1%、女性は31・0%となっている。
年齢階級別に見ると、70歳以上人口は2618万人(総人口の20・7%)で、前年と比較すると、100万人、0・8ポイント増となり、初めて20%を超えた。これは、いわゆる「団塊の世代」(1947年~49年生まれ)が2017年から70歳を迎え始めたことなどによるものと考えられる。
また、75歳以上人口は1796万人(同14・2%)で、前年と比較すると、50万人、0・4ポイント増、80歳以上人口は1104万人(同8・7%)で、31万人、0・2ポイント増となった。
総人口に占める高齢者人口の割合の推移を見ると、1950年(4・9%)以降一貫して上昇が続いており、85年に10%、2005年に20%を超え、18年は28・1%となった。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、この割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971年~1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、35・3%になると見込まれている。
2.高齢者の就業
2017年の高齢者の就業者(高齢就業者)数は、14年連続で前年に比べ増加し、807万人と過去最多となっている。
高齢就業者数の対前年増減を見ると、「団塊の世代」の高齢化などを背景に13年以降大きく増加しており、13年から16年までは65~69歳で主に増加、17年は70歳を迎え始めたことなどにより、70歳以上で主に増加している。
また、17年の高齢者の就業率(65歳以上人口に占める就業者の割合)は、男性が31・8%、女性が16・3%と、いずれも6年連続で前年に比べ上昇している。15歳以上の就業者総数に占める高齢者の割合は12・4%と、過去最高となっている。
産業別では卸売、小売が最多
17年の高齢就業者数を主な産業別に見ると、「卸売業、小売業」が125万人と最も多く、次いで「農業、林業」が99万人、「製造業」が92万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が91万人などとなっている。
なお、各産業の就業者総数に占める高齢者の割合を見ると、「農業、林業」が49・3%と最も高く、次いで「不動産業、物品賃貸業」が24・0%、「サービス業(他に分類されないもの)」が21・2%、「生活関連サービス業、娯楽業」が18・4%などとなっている。
高齢就業者を従業上の地位別に見ると、役員を除く雇用者が426万人で高齢就業者の53・1%、自営業主・家族従業者が271万人で同33・8%、会社などの役員が105万人で同13・1%となっている。さらに、高齢者の役員を除く雇用者(高齢雇用者)を雇用形態別に見ると、非正規の職員・従業員が高齢雇用者の74・4%を占めており、そのうちパート・アルバイトの割合が50・6%と最も高くなっている。
有業率は長野と山梨がトップ
17年10月1日現在の高齢者の有業率(24・4%)を都道府県、男女別に見ると、男性は長野県および山梨県(共に41・6%)が最も高く、次いで東京都(39・0%)、福井県(38・3%)、岩手県(37・3%)などの順となっている。
一方、女性も長野県および山梨県(共に21・6%)が最も高く、次いで岐阜県(19・9%)、福井県(19・8%)、栃木県(19・7%)などの順となっており、男女共に甲信・北陸地方などで高くなっている。
12年と比べると、男性は46都道府県で上昇、女性は全ての都道府県で上昇している。
3.国際比較で見る高齢者
世界でも高い高齢化率
2018年の高齢者の総人口に占める割合を海外と比較すると、日本(28・1%)は世界で最も高く、次いでイタリア(23・3%)、ポルトガル(21・9%)、ドイツ(21・7%)などとなっている。
なお、前述の通り日本の女性の高齢者が初めて2000万人を超えたが、女性の人口に占める高齢者の割合(31・0%)は、世界の女性の人口に占める高齢者の割合(9・9%)の3倍以上となっている。
主要国における高齢者の就業率を10年前と比較すると、カナダはプラス4・9ポイント、イギリス、ドイツおよび日本はプラス3・3ポイントと、各国共に上昇している。17年の日本の高齢者の就業率は23・0%となっており、主要国の中で最も高い水準にある。
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