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新型コロナウイルス感染症対策における中小企業支援に関する緊急提言 2020年3月6日 日本商工会議所 大胆な経済対策の実施 窮状打開に向けた支援

(図1)新型コロナウイルス感染症による経営への影響

日本商工会議所は、全国に感染が拡大し、わが国経済に大打撃を与えつつある「新型コロナウイルス感染症」に関して、既に経営に影響を受けている中小企業・小規模事業者の声を踏まえた緊急提言を、このほど取りまとめ、3月6日に公表した。特集では、本提言の全文を紹介する。

全国の515商工会議所は1月29日から、「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」を設置し、新型コロナウイルス感染症による経営への影響を受けた中小企業・小規模事業者の相談に迅速に対応している。商工会議所への相談件数は、2月下旬から急増し、3月4日現在、1188件となっている。

相談内容を見ると、初期は、「インバウンドの減少」や「サプライチェーンの停滞」に起因する「宿泊・ツアーのキャンセル」「海外製部品・資材が届かず生産・工事停止」など観光関連産業や製造業・建設業からの相談が目立っていたが、感染の拡大により、「日本人観光客の減少」に起因する相談が増え、近時は、「イベント中止」や「学校一斉休校」に起因する「相次ぐ予約キャンセルで大幅な売り上げ減少」「従業員の休業で業務に支障」「学校給食の休止により大幅減収」などにより、飲食業・サービス業・卸売業・小売業など全国のあらゆる業種・業態の中小企業・小規模事業者から悲鳴が寄せられ、地域経済への影響も深刻化している。

また、日本商工会議所の調査(実施時期:2月12日〜18日)では、6割を超える中小企業・小規模事業者が、「製品・サービスの受注・売り上げ減少、客数減少」など新型コロナウイルス感染症により経営に影響(懸念を含む)が生じていると回答しているが、同調査実施以降のさまざまな事態に鑑みて、経営に与える影響はさらに拡大していると推察される。(図1・2)

現在、収束時期など先が見えない不安感が国内を覆い、経済活動が過度に委縮しており、この状態が長引くと甚大な経済的ダメージを受けかねない。また、大規模自然災害から復興途中の地域には、特段の留意が必要である。今夏の東京オリンピック・パラリンピックを確実に成功させるためにも、当面の緊急対応を講じることはもとより、感染状況などを見極めつつ大胆な経済対策の検討を行うことが求められる。

これまで、日本商工会議所は、政府に随時、中小企業・小規模事業者の声を伝え、政府には「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」(2月13日)やその後の具体的な施策など迅速果敢にさまざまな中小企業支援策を講じていただいているが、今般、この難局の中、わが国経済の基盤であり事業継続に奮闘している中小企業・小規模事業者の声を踏まえ、改めて本緊急提言を取りまとめた。ついては、中小企業・小規模事業者の窮状をご賢察賜り、下記事項を何とぞ実現されたい。

Ⅰ 当面の対応策

1.感染拡大防止・早期収束に向けた果断な対応

○中小企業・小規模事業者は厳しい状況に置かれている中、事業継続に向け必死に対応しているが、経済活動の過度な委縮など、この状態が長引くと経営にさらに相当なダメージを受けかねないため、検査体制の増強による国民の不安解消を含め、より一層、感染拡大防止・早期収束に向け果断に対応されたい。

2.専門的・科学的根拠に基づいた情報発信の徹底

○過度に新型コロナウイルス感染症への不安をあおらないよう専門的・科学的根拠に基づいた適時・的確な情報発信を徹底するとともに、国民に対し正しい情報に基づいて冷静に対応するよう呼び掛けられたい。

○国内外のわが国の風評払拭(ふっしょく)に向け、情報発信などの対応を強化されたい。

3.資金繰り支援(セーフティーネット機能の強化)

(1)特別貸付制度(別枠、低利)の創設

○新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対する特別貸付制度(別枠、低利、長期、据え置き期間延長)を創設されたい。

(2)マル経融資の特別制度(別枠、低利)の創設

○新型コロナウイルス感染症の影響を受けている小規模事業者に対する小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)の特別制度(別枠、低利)を創設されたい。

(3)条件変更先への資金繰り支援など柔軟な対応

○政府系金融機関および民間金融機関、信用保証協会などに対し、積極的な新規融資や返済猶予などの既往債務の条件変更、条件変更先への資金繰り支援など、資金繰りの円滑化に向け柔軟かつ早期に対応されるよう、引き続き周知徹底されたい。

(4)二重債務問題の解消

○これまでの大規模自然災害で被災した中小企業・小規模事業者が新型コロナウイルス感染症の影響を受けた場合の二重債務問題を解消する対策を講じられたい。

(5)国税・地方税の申告・納付などの期限の延長

○新型コロナウイルス感染症の影響を受け、申告や納税が困難な中小企業に対して、国税・地方税の申告・納付などの期限の延長措置を講じられたい。また、事前の延長申請などができなかった場合でも、延滞税・利子税などが課せられることのないよう配慮されたい。

(6)社会保険料などの免除・軽減・納付期限の延長

○新型コロナウイルス感染症の影響を受け、社会保険料など(労働保険料や子ども手当の事業主拠出金などを含む)の納付が困難な中小企業に対して、社会保険料などの免除、賃金減額に伴う標準報酬月額の即時改定や社会保険料率の一時的な引き下げなどによる保険料負担の軽減、および納付期限の延長措置を講じられたい。

4.事業環境の整備

(1)売り上げ向上などに取り組む中小企業

○小規模事業者への支援

○新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、売り上げ向上や経営安定化などに取り組む中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、商品・サービス開発、IT活用、海外展開などを、補助金や税制措置などで早期かつ強力に支援されたい。

(2)政府・地方自治体の要請に伴い影響を受ける事業者への支援

○政府・地方自治体の要請を受けてのイベント・宴会中止に伴い損失を被る中小企業・小規模事業者への支援に努められたい。

(3)感染者発生時の円滑な対応への支援

○感染者発生時に事業所において対応すべき事項を記載したガイドラインなどを速やかに策定・公表されたい。

○感染者発生時の事業所の消毒、店頭在庫の廃棄など、保健所の指導などに基づいて義務的に発生する費用を支援されたい。

(4)感染拡大を防ぐためのマスク・アルコール消毒液などの確保

○マスク・アルコール消毒液などは、業務上も感染拡大を防ぐために必要であり、早期かつ安定的な供給を図られたい。

(5)下請けなど中小企業への取引上のしわ寄せ防止など

○新型コロナウイルス感染症により影響を受ける下請けなど中小企業への取引上のしわ寄せ防止などに向け、要請(2月14日)通りの対応となるよう実効性を確保されたい。

(6)柔軟な納期などの特段の配慮

○官公需について、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業・小規模事業者に対する官公需における配慮が各府省や都道府県などに要請(3月3日)されたが、柔軟な納期・工期の設定など同要請通りの対応となるよう、運用されたい。

○併せて、官公需以外についても、政府から同様の趣旨の呼び掛けを図られたい。

(7)補助金・助成金などの事業延期などに係る特段の配慮

○政府・地方自治体などが企業・団体などに交付している補助金・助成金などについて、事業延期などにより年度を越えることになっても、執行できるよう柔軟に対応されたい。

(8)申請書類の大幅な簡素化・手続きの迅速化

○支援施策を利用する際の申請書類の大幅な簡素化や手続き・採択の迅速化を図られたい。

5.雇用・労働対策

(1)雇用維持に向けた雇用調整助成金の受給要件の緩和

○雇用調整助成金について、新型コロナウイルス関連で事業活動の縮小を余儀なくされている事業主が幅広く利用できるよう、時限的に、受給要件の撤廃、対象者の拡大(非正規を含めた雇用者)、助成率の引き上げなどを図られたい。

○手続きを迅速に行うことで受給決定までに要する期間の短縮化を図るとともに、申請書類は郵送または持参で受け付けているが、事務負担のさらなる軽減と感染症拡大防止の両方の観点から、電子申請の導入を実現されたい。

(2)小学校などの臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援

○安倍内閣総理大臣が表明した「職場を休まざるを得なくなった保護者への新たな助成金制度」について、当該状況は雇用の形態によらず発生するものであり、労働者だけでなく経営者・個人事業主を含め、職場を休まざるを得なくなった全ての保護者に対し、公平に政府が助成金を支給されたい。

○このたびの緊急対応により、雇用保険特別会計や事業主拠出金の積立金残高が大幅に目減りするようであれば、料率引き上げではなく国庫負担により補填(ほてん)されたい。

(3)テレワークの活用推進

○この機会を契機に柔軟な働き方にも資するテレワークの活用推進に向け、中小企業・小規模事業者目線のIT専門家による支援体制構築とともに、時間外労働など改善助成金(テレワークコース)特例コースについて以下の措置を講じられたい。・パソコン、タブレット、スマートフォンの導入費の支給対象化・手続きの迅速化による、受給決定までの期間の短縮化※助成金の支給対象:テレワーク用通信機器の導入・運用、保守サポートの導入、クラウドサービスの導入、就業規則・労使協定などの作成・変更、労務管理担当者や労働者に対する研修・周知・啓発、外部専門家によるコンサルティング。

(4)時差出勤に資するフレックスタイム制度など柔軟な働き方の導入促進

○時差出勤に資するフレックスタイム制度について、同制度を導入している企業は2割にとどまることから、導入要件(就業規則への規定、労使協定の締結など)などをより一層周知するなど、制度導入を促進されたい。

(5)中小企業の新卒採用活動に対する支援

○合同会社説明会が中止になっている状況に鑑み、都道府県労働局が中小企業を対象にウェブ上で合同会社説明会を実施することや新型コロナウイルス感染症の影響が収束した後に合同会社説明会を開催するなど、中小企業の新卒採用を支援されたい。

○中小企業が独自に実施するウェブ上の説明会など新卒採用活動を支援するため、ウェブシステムなどを導入する場合の費用などを助成されたい。

(6)時間外労働の上限規制への柔軟な対応

○中小企業を対象に「時間外労働の上限規制」が4月から施行されるが、新型コロナウイルス感染症対応で繁忙な中小企業に対し、労働基準監督署が助言・指導に当たっての配慮規定にのっとり丁寧な指導を実施するよう、周知徹底されたい。

○新型コロナウイルス感染症対応で繁忙な事業主から労働基準法第33条(災害時の時間外労働など)の適用に関する届け出がなされた場合、労働基準監督署が迅速に許可をするなど柔軟に対応するよう、周知徹底されたい。

(7)最低賃金に関する新たな政府方針の設定と中小企業の経営実態を踏まえた適正な水準の決定

○「経済財政運営と改革の基本方針」で示される最低賃金に関する政府方針について、政府は新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大による日本経済への影響を慎重に見極めた上で、2020年度の政府方針を設定されたい。

○最低賃金の水準について、20年度は例年以上に足元の景況感や経済情勢を十分に反映した慎重な審議が求められる。

○リーマン・ショック時の09年度の引き上げ率(1・42%)や東日本大震災時の11年度の引き上げ率(0・96%)を踏まえ、20年度は、引き上げの凍結を視野に入れた上で、中小企業の経営実態を踏まえた適正な水準を決定されたい。

Ⅱ 大胆な経済対策の検討・準備

○新型コロナウイルス感染症の影響により、全国のさまざまな業種

○業態の中小企業・小規模事業者が、大幅な売り上げ減少など大打撃を受けており、地域経済に与える影響も計り知れない。

○ついては、感染状況などを見極めつつ、わが国経済の基盤である中小企業・小規模事業者が勇気を持って事業継続できるよう、引き続き必要に応じてちゅうちょなく追加的な対策を実行するとともに国内外の観光振興策の強化をはじめ事態の収束後、直ちに実行すべき需要喚起策などの大胆な経済対策を今から検討・準備されたい。