大量処理要求で高負荷状態に
近年、多くの企業がインターネット上で、ウェブサイトなどを運営し、情報の発信やサービスの提供を行っているが、そうしたウェブサイトや企業で利用しているDNSサーバーに対して、大量の処理要求を送信して高負荷状態にさせるDDoS(分散型サービス妨害)攻撃が確認されている。処理が追い付かなくなるほどの処理要求を受けたウェブサイトやDNSサーバーは、閲覧ができなくなったり、レスポンスが遅延したりするなど、サービスを正常に保つことができなくなるため、機会損失による損害などが発生することになる。
2018年10月には、動画サイトにおいて、サービスが利用できなくなったり、画面表示に時間がかかったりするなどの不具合が発生した。動画サイトの運営者は、システムに過剰な負荷を及ぼす異常な量の通信が観測されたことを受け、その通信を遮断したが、攻撃者は手段を変えて同事象を発生させるなどして、執拗(しつよう)なDDoS攻撃が行われたと報道されている。
DDoS攻撃の主な手口として、攻撃者に乗っ取られた複数のサーバーやIoT機器から形成されるネットワーク(ボットネット)に攻撃命令を出し、標的企業のウェブサイトやDNSサーバーへ大量のアクセスを行い、高負荷を掛けてくる。また、送信元のIPアドレスを標的組織のサーバーに偽装して、多数のルーターやDNSサーバーなどに問い合わせを送り、応答結果を標的組織に送り付け、高負荷を掛けてくる場合もある。
近年は、違法取引などが行われるダークウェブなどにあるDDoS代行サービスを利用してDDoS攻撃を行うケースも確認されている。DDoS攻撃のための専門的な技術や設備がなくても攻撃が行えるため、ウェブサイトなどを運営している企業は規模にかかわらずDDoS攻撃への備えを怠ることはできない。
アクセス制限し被害予防
DDoS攻撃に対する被害予防として以下が挙げられる。 ・ISP(インターネット接続事業者)などのサービスを利用している場合は、サービスの価値とかける費用を考慮して、最大許容量の見直しなどを行う。また、オプションなどでDDoS対策が提供されている場合はそれを利用する。 ・外部から不要なサーバーやサービスへのアクセスを制限する。 ・システムの冗長化などの軽減策を実施する。 ・ネットワークを冗長化し、DDoS攻撃の影響を受けない非常時用ネットワークを事前に準備する。 ・DDoS攻撃を受けてサービスを停止させられることを想定して、サービス停止時の代替サーバーや、サービス停止によって利用者を混乱させないための告知用サーバーや、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の企業公式アカウントなどの連絡手段を用意しておく。
また、DDoS攻撃の被害を受けた後の対応として以下が挙げられる。 ・CSIRT(セキュリティー対応組織)へ連絡する。 ・攻撃元IPアドレスからの通信をブロックなどの通信制御を行う。 ・利用者へ状況の告知を行う。 ・影響調査および原因の追究、対策の強化を行う。 DDoS攻撃対策の詳細については、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のウェブサイト(https://www.ipa.go.jp/security/)の公開資料を参考にしてほしい。 (独立行政法人情報処理推進機構・江島将和)
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