売れる商品をつくり、主婦の能力示したい
株式会社イート 代表取締役 木原 奈津子(きはら・なつこ)
主婦3人で食品会社を起業
起業するまで、私は夫が経営するマーケティング会社で仕事をしていました。会社は県産品のブランディングやリサーチ、販売促進などを行っており、私の仕事は新商品(食品)を一般消費者に試食してもらい、アンケートを集計・分析してより売れるよう提案すること。約80商品のマーケティングを行い、〝売れる〟ためには味、価格、量、販売チャネル、競合状況、他社商品との差別化など不可欠な条件があると学びました。こうした経験を通して自分たちで売れる商品を作りたいと思うようになり、平成26年に主婦3人で食品会社イートを立ち上げました。
イートは、「誰もがおいしいと思う商品を、できるだけ体にやさしい原料で、新商品として開発、販売すること」がモットー。この理念の下に開発したのが「キャラいも」です。南九州産サツマイモを一口大にカットして揚げ、キャラメルでコーティングしたお菓子で、試作品開発や試験販売ができる宮崎食品開発センター「フード・オープンラボ」を活用し、試行錯誤の末に完成しました。
転機が訪れたのは工場稼働の2カ月後。キャラいもが全日本空輸(ANA)の客室乗務員(CA)が選ぶ逸品「CAセレクト」の1位に選ばれ、機内販売に採用されたのです。このため厳しい工場監査を受けることになり、日産製造数もそれまでの5倍に。うれしい半面、不安と緊張で眠れない日が続きました。トラブルもなく2カ月間の販売を終え、ヒット商品と言えるほど売り上げたと聞いたときは心底ほっとしましたが、これはその後の自信につながりました。
主婦も高齢者も障がい者も長く楽しく働ける企業目指す
創業から今日まで私たちがチャンスをつかみ、仕事を続けてこられたのは、「商品力」「行政や各団体との連携」「助成金補助金の有効活用」「モチベーションが高く有能なスタッフの力」によるものです。今後もこれらは当社が成長する上で大切な力となるでしょう。私の今の一番の目標は、家事や育児をこなしながらも素晴らしい仕事をしている女性スタッフたちが、自分は社会的に評価されている商品を作っているのだと誇りに思える企業にしていくこと、そして商品とともに「主婦の実直さと高い能力」を社会に示すことです。そのためにはおいしくて質の高い商品を作り続け、収益をきちんと上げていかなくてはなりません。
今年6月に新工場が完成し、製造量はこれまでの4倍になります。現商品のバリエーションや新商品のラインアップも増やせます。雇用創出や納税などで事業主として社会に貢献するだけでなく、社会に必要な企業にしていくという覚悟で大きな融資を受け、工場新設を決めました。主婦だけでなく、高齢者や障がい者も互いの特性を理解し合いながら誇りを持って一生楽しく働ける企業を目指します。労働力確保が難しいとされる今後の社会で、地方の中小企業がつくるダイバーシティの一つの形を体現したいと考えています。
会社データ
社名:株式会社イート
所在地:宮崎県宮崎市清武町船引644-62
電話:0985-84-4488
創業:平成26年
事業概要:菓子製造販売
※月刊石垣2018年3月号に掲載された記事です。
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