介護人材の定着・育成へ「人磨き支援」
株式会社CPI 代表取締役 本宮 薫(ほんぐう・かおる)
介護現場の指導力不足実感し2度目の起業を決断
10歳の頃から実業家になるのが私の夢でした。家族が事業をしている影響もあり、その思いを抱いて24歳で建築設備設計の会社を起業。しかし、不況のあおりを受け30歳のとき廃業しました。その後は子育てに専念しましたが、「働く」ことに強い関心を持ち続け、35歳のとき愛媛県の職業訓練校で就職支援員として働き始めました。同校では介護訓練を担当。千人以上の離職者と接する中で介護現場の現状を知り、指導力や教育システムの不十分さを感じました。近年問題となっている高齢者虐待の原因は、従業員の介護知識の不足とストレスであるといわれています。こうした問題に直面し、「愛媛の介護を1番に」「介護施設で働く人が誇りを持って働けるよう支援したい」との想いが芽生えました。
そこで、同様の問題意識を持った仲間と共に介護現場の職員の離職を防止し、人材の定着につなげる「NO!離職プログラム」を作成、地元の銀行主催のビジネスプランコンテストに応募したのです。これが奨励賞を受賞したことから、平成27年、再度起業することとなりました。過去に廃業を経験したため勇気の要る決断でしたが、介護現場をより良くしたいという強い思いと仲間たちの支えがあり、一歩踏み出すことができました。
「NO!離職プログラム」は、介護現場のニーズや課題に応じた「研修」、職員への「個別面談」、職場環境のハード面や仕組みを改善する「実地調査」の三つで構成、包括的に人材育成を行うプログラムです。導入した事業者からは、「職場の改善を考えていたが取り組み方が分からなかった。指導方法を学んだことで職場が変化した」と喜びの声をいただいています。
海外向け事業へも挑戦
私たちのサービスが多くの介護事業者に利用されるようになったものの「まだまだこれから」というとき、介護現場の教育で避けて通れない問題が出てきました。外国人技能実習制度に介護職種が加わったのです。これは、介護現場で、外国人技能実習生も教育の対象となることを意味します。周りの多くの介護事業者の要望を受け29年1月、外国人技能実習生に向けた教育教材・プログラムを提供する機関として一般社団法人日本介護職業能力育成機構(JCCD)を立ち上げました。その後ベトナムの教育機関と提携。当社のノウハウや指導側と生徒側双方の視点を取り入れた基本テキストと専門用語や会話が学習できるドリルを開発・提供しました。これにより実習生は来日前から日本の介護の基礎を学ぶことができます。
会社がまだ安定していない時期に海外向け事業を始めてよいのかと迷いましたが、すぐに対処しなければ日本の介護現場は混乱してしまうでしょう。そう思い、新たな挑戦を始めました。当社の使命は、「人磨き支援」。今後も挑戦する心を忘れず、年度ごとに変わる介護現場のニーズに教育プログラムを対応させ、介護現場の人材育成に努めていきたいと思います。
会社データ
社名:株式会社CPI
所在地:愛媛県松山市宮西3丁目4-40
電話:089-904-2077
創業:平成26年
事業概要:サービス業・教育(介護人材育成)
※月刊石垣2018年4月号に掲載された記事です。
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