日本商工会議所は5月29日、5月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果を発表した。調査期間は5月15~21日。全国422商工会議所が2984企業にヒアリングした。
5月の全産業合計の業況DIは、マイナス13・5と、前月からプラス1・8ポイントの改善。日商では、「輸出増に伴う生産の伸びや好調なインバウンドによる下支え、株高・賃上げに伴う消費者のマインド好転に加え、一部で設備投資の動きが出始めるなど、中小企業の景況感は、受注・売上の回復を背景に持ち直しに向けた動きが進む」と指摘している。ただし、比較対象の前年同月は駆け込み需要の反動の影響から業況が一段と悪化した時期であることに留意が必要と分析。また、「業況DIの好転は、「悪化」から「不変」への変化が主因であり、依然としてコスト増や取引価格への転嫁遅れ、人手不足などが足かせとなる状況が続いている」としている。
業種別では、建設業は、住宅関連や設備投資などの民間工事に持ち直しの動きがみられる一方、低調な公共工事が押し下げ要因となり悪化。製造業は、コスト増加分の取引価格への転嫁遅れを指摘する声が聞かれるものの、自動車や工作機械などでは輸出向けの生産増を背景に、底堅い動きが続いている。
卸売業は、気温の上昇に伴い、夏物商品の受注が伸びたほか、原材料高に伴う仕入価格の上昇分を販売価格に転嫁する動きが広がりつつあることなどから、マイナス幅が縮小。小売業は、改善したものの、「悪化」から「不変」への変化が主因であり、実体はほぼ横ばいの状況となった。また、消費者のマインドが好転しつつある中、夏物商品を中心に売上が伸びた一方、一部では食料品などの相次ぐ値上げにより不要な支出を控える動きも見られる。
サービス業は、インバウンドによる下支えに加え、ゴールデンウィークの観光客の入込も好調だったことなどから、改善の動きが見られた。
先行きについては、先行き見通しDIがマイナス14・3(今月比マイナス0・8ポイント)とほぼ横ばいを見込む。日商では、「コスト増加分の価格転嫁遅れや人手不足、人件費の上昇などが、引き続き経営の足かせになるとの見方から、一部にもたつきが残る」と分析するが、大手企業の業績改善が進む中、受注増や設備投資の持ち直しへの期待感が伺えるほか、夏の賞与増を含む所得環境の好転から、個人消費の伸びを見込む声も聞かれている。
付帯調査 設備投資「行う」38% 「踏み切れない」の声も
日商では、5月のLOBOと同時に、2015年度の設備投資動向に関する付帯調査を実施した。 2015年度に設備投資を「行う(予定含む)」企業(全産業)は38・8%と、2014年5月調査と比べ、ほぼ同水準となった。他方、「未定」は41・6%と、8・7ポイント増加し、「見送る」は19・6%と、9・7ポイント減少した。
設備投資内容は、「国内で新規設備投資」(全産業)が42・7%、「国内で既存設備の改修・更新」が72・3%、「海外で新規投資または既存設備の改修・更新」が、4・6%となった。国内の新規設備投資の目的は、「能力増強」が46・3%、「品質向上・新製品生産・新分野進出」が37・9%、「省力化・合理化」が29・0%の順で多くなっている。
ヒアリングした中小企業からは、「老朽化した店舗の建替えを行い、今夏にリニューアルオープンする。また、売上が堅調なこともあり、秋口に新規出店を予定している」(総合スーパー)、「清掃業務に必要な抗菌モップのクリーニング工場を新設。自社オリジナルサービスとしてPRし、新規顧客開拓につなげた」(ビルメンテナンス)などの積極的な意見が聞かれた一方、「売上が伸びているため、既存設備の改修を行うが、仕入価格の高騰などが負担となり、大規模な設備投資を行うほどの余裕はない」(宿泊)、「取引先で高品質な日本製品へのニーズが高まっているため、設備投資や人員増強を図りたいが、安定的な受注が続くか見通せず、踏み切れない」(衣料品製造)など、先行きの不安などから慎重な意見も聞かれた。
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