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「下町育ちの再建王」の経営指南 『部下ノート』を作っていますか?

会社が業績を上げるには社員の能力を高めることが大切ですが、それは社員一人一人の長所を伸ばす、ということに他なりません。上司は社員をよく観察し、どんな些細(ささい)な長所でもそれに光を当て、「この部分、すごいと思うよ。だからココを自分でも意識してやってみれば……」と頑張らせてみることが大切です。長所伸展法の実践は上司としての能力が問われる点でもあります。

私は昔から『部下ノート』を作っていました。ノートの見開き二ページを一人の社員分として名前を書き、左右半分に分けて左のページには長所、右のページには短所を書きます。いついつ、どんな時にこんなことをしていた、といった覚書です。このノートを作るとその社員の特徴がよく見えてきます。

そもそも給料は何に対して支払われているかというと、その人の持つ、二つか三つの長所に対するものです。上司は部下の長所を見出し、それを伸ばして、その部分が一人前になれば、その社員は一人前の給料を受け取れるようになったということです。もしその長所が一流になれば、その社員は一流と呼ばれる人になり、会社は一流の人材を抱えている、ということになるのです。

一方、短所の是正ですが、悪いところを直しても多くの場合、業績には関係ないので、目をつぶることができる短所は、そのままでもよいと思います。ただ自社の人間として、最低限のマナーや許せない点などは、直してもらわないといけないので指導します。この時の目的は注意をすることではなく、相手の心に語りかけて変わるように促すことです。

私の場合、できれば二人だけのときに、「君の長所を生かすために、聞いてもらいたいことがある。実はこういうノートを作っていて、君についても気になっているところが、いくつかあるんだ。今日は一つだけ言うから、気を付けて直してみてくれないか……」と、もちかけます。すると、部下は私の気持ちを理解し、素直に変わろうとしてくれます。

大事なことはその後、彼の努力の様子をノートに付けて、次回の面談で評価することです。会社でノートというと、課題や業績に対するものばかりで、部下個人の成長に関しては心の中にとどめておくことが多いのではないでしょうか。しかし、社にふさわしく、しかも業績を上げる社員に成長してもらうには個人の部分こそが重要です。

短所是正は業績アップにはつながりませんが、そのことで人間関係がギクシャクすることは多々あります。上司としてリスクのある業務であるからこそ、それをうまくやるために、『部下ノート』はとても役立つ策なのです。

小山 政彦(こやま・まさひこ) 株式会社 風土 代表取締役会長 (前 船井総合研究所 代表取締役会長) 1947年、東京生まれ。開成高校卒。早稲田大学理工学部数学科卒業後、実家のディスカウントストア経営に携わる。84年、船井総合研究所に入社。6年後には売り上げ3億円のNo.1コンサルタントになる。2000年の社長就任後は大証2部から東証1部上場、離職率20%台を6%までに改善、賞与支給No.1企業など経営者としても手腕を振るう。10年には代表取締役会長に就任。13年3月をもって退任し、現在は㈱風土代表取締役会長を務める。著書に『ベタ惚れさせるマネージメント』(講談社)、『9割の会社は人材育成で決まる!』(中経出版)など多数

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