会社が業績を上げるには社員の能力を高めることが大切ですが、それは社員一人一人の長所を伸ばす、ということに他なりません。上司は社員をよく観察し、どんな些細(ささい)な長所でもそれに光を当て、「この部分、すごいと思うよ。だからココを自分でも意識してやってみれば……」と頑張らせてみることが大切です。長所伸展法の実践は上司としての能力が問われる点でもあります。
私は昔から『部下ノート』を作っていました。ノートの見開き二ページを一人の社員分として名前を書き、左右半分に分けて左のページには長所、右のページには短所を書きます。いついつ、どんな時にこんなことをしていた、といった覚書です。このノートを作るとその社員の特徴がよく見えてきます。
そもそも給料は何に対して支払われているかというと、その人の持つ、二つか三つの長所に対するものです。上司は部下の長所を見出し、それを伸ばして、その部分が一人前になれば、その社員は一人前の給料を受け取れるようになったということです。もしその長所が一流になれば、その社員は一流と呼ばれる人になり、会社は一流の人材を抱えている、ということになるのです。
一方、短所の是正ですが、悪いところを直しても多くの場合、業績には関係ないので、目をつぶることができる短所は、そのままでもよいと思います。ただ自社の人間として、最低限のマナーや許せない点などは、直してもらわないといけないので指導します。この時の目的は注意をすることではなく、相手の心に語りかけて変わるように促すことです。
私の場合、できれば二人だけのときに、「君の長所を生かすために、聞いてもらいたいことがある。実はこういうノートを作っていて、君についても気になっているところが、いくつかあるんだ。今日は一つだけ言うから、気を付けて直してみてくれないか……」と、もちかけます。すると、部下は私の気持ちを理解し、素直に変わろうとしてくれます。
大事なことはその後、彼の努力の様子をノートに付けて、次回の面談で評価することです。会社でノートというと、課題や業績に対するものばかりで、部下個人の成長に関しては心の中にとどめておくことが多いのではないでしょうか。しかし、社にふさわしく、しかも業績を上げる社員に成長してもらうには個人の部分こそが重要です。
短所是正は業績アップにはつながりませんが、そのことで人間関係がギクシャクすることは多々あります。上司としてリスクのある業務であるからこそ、それをうまくやるために、『部下ノート』はとても役立つ策なのです。
お問い合せ先
社名:株式会社 風土
TEL:03-5423-2323
担当:髙橋
最新号を紙面で読める!