Q 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(通称:マイナンバー法)が、来年1月から運用開始になります。会社にとっては、いったいどのような影響があるのでしょうか? 当社も準備をしなくてはいけないのでしょうか?
A 個人番号は今年10月から通知が始まります。企業は従業員、その扶養家族の番号を申告してもらい、厳重に管理し、法定調書などに記載して利用しなければなりません。企業には安全管理義務が課せられていますので、十分な体制を整備して収集、管理、利用する義務があり、故意に漏えいさせた従業員はもちろん、その監督が不十分であった企業にも罰則が設けられているので、注意が必要です。
本人確認作業が必要
企業は従来、名前と住所で個人を特定して「源泉徴収票」などの法定調書を作成・提出してきました。しかし来年1月からは、個人番号を確認した上で支払調書に記載して提出。その上で記録を保管・管理することになります。
これに加えて、社会保障分野で「健康保険」「雇用保険」「企業年金」などで求められる調書で、個人番号の記載が必要となります。これらは全ての事業者に必要な作業であって、例外はありません。この番号制度によって、収入の無申告・仮名口座・借名口座・赤字法人を隠れ蓑とした悪用・タックストラベラー(課税地を転々とする手法)などの脱税方法の防止を実現するといわれています。
また、給与を支払う場合には、企業は、支払対象者が受領者の名義人に間違いないかを確認する作業(本人確認作業)が必要となります。本人確認作業とは、本人の写真入りの証明書などにより、他人へのなりすましではないと確認することです。なお、扶養家族については企業が直接扶養家族の本人確認をする必要は基本的になく、当該従業員に本人確認を求める方法でもよいとされます。
さらに、企業が確認作業を行った記録も必要です。本人確認書類・番号確認書類により点検した事実、必要な場合には証明書のコピーを取り(原本は返却)、確認作業を正確に行った記録とすることも考えられます。この本人確認は番号制度を支える極めて重要な基盤となるものですから、しっかりと実施して、その記録を残すようにします。
利用記録は適切な管理を
企業は、このように集めたマイナンバーが漏えいしないよう、マイナンバーと、それに付随する情報(特定個人情報)、その利用記録などを適切に管理しなくてはいけません。具体的な対策としては、「組織的安全措置」「人的安全措置」「物理的安全措置」「技術的安全措置」が必要とされています。
特に注意すべき点は、特定個人情報、番号情報にかかるデータは、他のデータベースシステムとは分けて別のものとして、管理することです。これは、従来の情報と結合したり、連携させたりしないということで、注意が必要です。
また、特定個人情報はアクセス制御などの十分な安全対策を行い、無断での持ち出しや、他目的利用などがないようにしなければなりません。出力した帳票類は、鍵付きロッカーへ入れましょう。ずさんな管理がなされている場合には、行政指導・勧告・命令が出されるほか、違法な持ち出しや利用に対しては罰則が科されることになっています。また、従業員の違法行為に対しては企業も処罰対象とされます(両罰規定)。
これらの点を踏まえてマイナンバー法対応をしっかり進めてください。
(弁護士 牧野 二郎)
体制を整備し、適切に管理する
★番号と、番号に紐(ひも)づく特定個人情報を保護する体制を確立しておきましょう。
★本人確認、番号確認をしっかりと実施し、正確な番号を把握しましょう。また、確認作業を実施したことも記録しておきましょう。
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