日本商工会議所は5月28日、政府が3%をさらに上回る最低賃金の引き上げ目標を新たに設定することへの反対や、納得感のある水準の決定などを求める緊急要望を東京商工会議所と共同で取りまとめ、関係各方面へ提出した。併せて、最低賃金の引き上げの影響に関する調査結果も公表した。30日には、日商の伊藤一郎特別顧問(東京・副会頭)らが厚生労働省の鈴木俊彦事務次官を訪ね、要望書を手交した。また、日商、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会の中小企業関係3団体連名による同様の趣旨の緊急要望も同日、取りまとめた。(関連記事2面、要望全文3面に)
これまでも日商は最低賃金について政府目標ありきではなく、あくまで中小企業の経営実態を重視した審議を行うべきであると主張してきた。要望では、「中小企業は総じて厳しい経営環境にあるばかりか、中小企業の経営者は賃金支払い余力が乏しい中、深刻な人手不足に対処するために、実力以上の賃上げを強いられているのが実態」と指摘。「足元の景況感や経済情勢、中小企業の経営実態を考慮することなく、政府が3%をさらに上回る引き上げ目標を新たに設定することには強く反対」としている。
地域別最低賃金の決定に当たっては最低賃金法第9条により、①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払い能力──の3要素を総合的に勘案することが求められている。しかし、近年は審議の結果、根拠が必ずしも明確ではない大幅な引き上げが続いている。
日商の調査では、最低賃金引き上げの直接的な影響を受けた中小企業の割合は、38・4%に上り、年々増加の一途をたどっている。最低賃金の大幅な引き上げは、地域経済の衰退に拍車を掛けることが懸念されるため、要望書では、「最低賃金の審議では、中小企業の経営実態を考慮することにより、納得感のある水準を決定すべきであり、3%といった数字ありきの引き上げには反対」と強調している。
また、「政府は賃金水準の引き上げに際して、強制力のある最低賃金の引き上げを政策的に用いるべきではない」として、生産性向上や取引適正化への支援などにより中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備するよう求めている。その他、改定後の最低賃金に対応するための十分な準備期間の確保などを要望している。
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