「捨てるなんてもったいない!」 学生服と体操着のリユース業を展開
株式会社サンクラッド 代表取締役 馬場 加奈子
失われていた「お下がりネットワーク」
私は3人の子を持つシングルマザーですが、サラリーマン時代は仕事中心の生活で、子どもたちと過ごす時間が少ないことが悩みでした。そして、障がいのある長女が特別支援学校へ入学する平成23年を前に、時間の融通が利く自営業への転換を考え始めたのです。
起業のヒントになったのは、サイズが合わなくなってしまった次女のセーラー服でした。あと半年しか着ない学生服ですが、きゅうくつだからと買い換えれば、上下で2万円以上もの出費になります。母として子どもの成長を喜びたいのに、お財布事情を考えると出るのはため息ばかり。仕事が忙しく学校行事への参加も難しかった私には、お下がりを気軽に頼める〝ママ友〟もいませんでした。
ところが、当時の職場でそのことを話してみると、子どもを持つ同僚たちから同じ悩みが聞こえてきたのです。働くお母さんが増えたことに加え、地域のコミュニティに属さない家庭も多く、隣近所に誰が住んでいるのか分からないのが当たり前、という現代。昔は普通に機能していた、近所のお兄さんやお姉さんからお古の服をもらう「お下がりネットワーク」は、いつの間にか失われていました。私立高校なら20万円以上掛かるのも珍しくない、高額な学生服。負担に感じているお母さんは全国にいるに違いない……。中古学生服・体操服のリユース店「さくらや」は、こうして誕生しました。
学生服を通じてお母さんと地域社会を応援
しかし、自宅が拠点では地域の信用も得られず、学生服の買い取りが進みません。そこで半年後、思い切って実店舗を開店。周知のため、子どもたちと昼夜ポスティングに明け暮れました。2カ月後、チラシを持って来店してくれたお母さんの「こんなお店がほしかった」という本音に触れ、やはりニーズはあったのだ、と確信。口コミで徐々に増え始めたお客さまの「ありがとう」の言葉を励みに、〝お母さんの役に立つサービスとは何か〟を必死に考えながら、経営を軌道に乗せていきました。
現在では地域のお母さんを直営店で積極雇用しているほか、加盟店を募ってフランチャイズ展開も行っています。さくらやのノウハウを、私と同じ境遇にある働くお母さんに伝授し、開業支援につなげていきたいのです。
また、当店では地域社会に貢献するため、買い取った学生服や体操服のメンテナンス作業に障がい者や高齢者に参加してもらっています。例えば、体操服の洗濯は提携する障がい者施設に依頼し、社会進出をお手伝い。また、体操服の名前の刺しゅう取りは、高齢者にお願いすることで生きがい活動の一環として好評を得ています。
さくらやの目標は、売る側も買う側も豊かになれるビジネス。「学生服を通じてお母さんたちを応援し、地域社会の役に立ちたい」という初心を忘れずに、当店は〝笑顔の発信の場〟であり続けたいと思います。
会社データ
社名:株式会社サンクラッド
所在地:香川県高松市
創業:平成23年
事業概要:学生服専門の買い取り、販売リユースショップ・通販サイトの運営、お母さんの開業支援
※月刊石垣2015年2月号に掲載された記事です。
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