政府は5日、「第28回未来投資会議」を首相官邸で開催した。会議では、成長戦略案などについて議論した。会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、成長戦略案に中小企業の生産性向上の視点が盛り込まれた点を評価。「前回の成長戦略は、主に大企業を念頭に置いた内容と感じたので、中小企業にもっとフォーカスすべきと申し上げてきた。中小企業の生産性を高めることが日本全体の経済成長に不可欠」と改めて強調した。
未来投資会議で提示
会議で示された成長戦略案には、「ローカルのグローバル化を進めるなどにより、中小企業・小規模事業者の生産性を高め、付加価値を増加させ、従業員や家族の消費を支え、地域経済にも貢献するという好循環を促すことが、わが国全体の成長に不可欠」と中小企業・小規模事業者の生産性向上に関する記述が盛り込まれた。具体的な支援としては、①デジタル実装支援、②経営資源引き継ぎの促進、③経営者保証、④産業ごとのきめ細かな取引関係の適正化の4点が示されている。
三村会頭はデジタル技術の実装化推進について、「普及が進んでいるものの、いまだ発火点には到達していないので、粘り強く支援を続けることが最も肝要」と強調。経営者保証については、新旧経営者に対する二重徴収の原則禁止、後継者の経営者保証を不要とする新たな信用保証メニューの創設などが盛り込まれたことを評価した。
また、取引関係の適正化については、下請法や独禁法の適用強化について言及するとともに、「下請法でカバーされる事業者の割合は全体の10%くらいでしかなく、90%は自由契約の名の下に、より力の強い購買者の優位性に委ねられている。日商の調査では、中小企業の約80%がコストアップを十分転嫁できていない」と指摘。サプライチェーン全体の中で、大企業と中小企業がさまざまなコストアップを公正に負担し合ったり、大企業が中小企業のデジタル技術実装に協力したりすることで、中小企業の生産性向上を後押しし、経済全体の付加価値を高めるといった新たな共存共栄の関係を構築することが必要との考えを示した。
安倍晋三首相は、「成長戦略こそアベノミクスのエンジンである。第4次産業革命とも呼ぶべき急激な変革の時代にあって、人や資金が柔軟に動けるよう、これまでの発想にとらわれない大胆な政策をスピーディーに実行に移していかなければならない」と述べた。
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