観光庁はこのほど、報告書「持続可能な観光先進国に向けて」を公表した。一部の観光地においては、急速な訪日外国人観光客の増加などにより混雑やマナー違反が問題となるなど、観光客の増加が地域に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」への対応が求められている。同報告書は、自治体へのアンケート調査などにより、持続可能な観光の実現に向けた国内外の先進事例を整理するとともに、観光庁としての今後の取り組みの方向性を示している。
観光庁が2018年に地方自治体を対象に実施したアンケート調査では、「マナー・ルール」「混雑」は多くの地方自治体で課題として認識されやすい傾向にあった。個別課題としては、「観光客のマイカーや観光バスなどによる交通渋滞」「日帰り客などの増加に伴う観光収益の漏出」「宿泊施設の不足」「トイレの不適切な利用」「緊急時の安全確保」が上位となった。
このため、同報告書では、日本の観光を取り巻く現状について、主要な観光地を抱える自治体は、訪問する旅行者の増加に関連する課題の発生を認識しており、特に近年では混雑やマナー違反に関する個別課題を強く意識する傾向にあると指摘。当該地方自治体の多くが、これらの課題に対するさまざまな対応策を講じ始めているとしている。一方、全国的な傾向としては、現時点においては、他の主要観光国と比較しても「オーバーツーリズム」が広く発生するには至っていないと分析している。
今後の取り組みの方向性としては、京都などの代表的な観光地において、関係自治体と協力して、混雑やマナー違反対策などに関するモデル事業などを実施し、観光庁で収集した国内外の先行事例とともに、全国に横展開していくとしている。また、各自治体や観光地域づくり法人(DMO)が多面的な現状把握の結果に基づき持続可能な観光地経営を行うよう、国際基準に準拠した「持続可能な観光指標」を開発・普及していく方針だ。
最新号を紙面で読める!