政府は5月29日の閣議で、第4次少子化社会対策大綱を決定した。大綱は少子化社会対策基本法に基づく総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の指針。2004年、10年、15年に続くもので、5年ぶりに見直した。基本的な目標として「希望出生率1・8」を掲げ、目標実現へ環境を整える。
少子化大綱(概要)
<背景>
19年の出生数(推計)は86万4000人と過去最少(「86万ショック」)だった。少子化の進行は、人口の減少と高齢化を通じて社会経済に多大な影響を及ぼす、国民共通の困難。
少子化の背景にある、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む隘路(あいろ)の打破に強力に取り組む必要がある。
・少子化の進行は、人口(特に生産年齢人口)の減少と高齢化を通じて、社会経済に多大な影響
・少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化、有配偶出生率の低下
・長期的な展望に立ち、必要な安定財源を確保しながら、総合的な少子化対策を大胆に進める必要
・新型コロナウイルス感染症の流行は、安心して子どもを生み育てられる環境整備の重要性を改めて浮き彫りに
・学校の臨時休業により影響を受ける子育て世帯に対する支援などの対策と併せて、非常時の対応にも留意しながら総合的な少子化対策を進める
<基本的な目標>
・「希望出生率1・8」の実現に向け、令和の時代にふさわしい環境を整備し、国民が結婚、妊娠・出産、子育てに希望を見いだせるとともに、男女が互いの生き方を尊重しつつ、主体的な選択により、希望する時期に結婚でき、かつ、希望するタイミングで希望する数の子どもを持てる社会をつくる(結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであり、個々人の決定に特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりすることがあってはならないことに十分留意)
<基本的な考え方>
1 結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる
・若い世代が将来に展望を持てる雇用環境などの整備
・結婚を希望する者への支援
・男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備
・子育てなどにより離職した女性の再就職支援、地域活動への参画支援
・男性の家事・育児参画の促進
・働き方改革と暮らし方改革
2 多様化する子育て家庭のさまざまなニーズに応える
・子育てに関する支援(経済的支援、心理的・肉体的負担の軽減など)
・在宅子育て家庭に対する支援
・多子世帯、多胎児を育てる家庭への支援
・妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援
・子育ての担い手の多様化と世代間での助け合い
3 地域の実情に応じたきめ細かな取り組みを進める
・結婚、子育てに関する地方公共団体の取り組みに対する支援
・地方創生と連携した取り組みの推進
4 結婚、妊娠・出産、子ども・子育てに温かい社会をつくる
・結婚を希望する人を応援し、子育て世帯をやさしく包み込む社会的機運の醸成
・妊娠中の方や子ども連れに優しい施設や外出しやすい環境の整備
・結婚、妊娠・出産、子ども・子育てに関する効果的な情報発信
5 科学技術の成果など新たなリソースを積極的に活用する
・結婚支援・子育て分野におけるICTやAIなどの科学技術の成果の活用促進
<施策の推進体制>
・有識者の意見を聞きつつ施策の進捗(しんちょく)状況などを検証・評価する体制を構築し、PDCAサイクルを適切に回す
・施策について数値目標を設定するとともに、その進捗を定期的にフォローアップ
・さらに強力に少子化対策を推し進めるために必要な安定財源の確保について、国民各層の理解を得ながら、社会全体での費用負担の在り方を含め、幅広く検討
意見書を提出
日本商工会議所は、少子化大綱に先立ち、内閣府が実施した「第4次少子化社会対策大綱(案)」の意見募集(パブリックコメント)に対し、中小企業の視点に立った意見書を提出した。