日本のゆばの歴史は約1300年前、唐の僧・鑑真によって奈良に伝えられたのが始まりといわれている。しばらくして、栃木県の日光山にも伝わり、山岳修行僧たちの携帯食として重用された。その後も長い歴史を経てなお、門前町の名物料理として愛され続け、市内には今でも「湯波(ゆば)」ののぼりを立てる多くの店に、日々行列ができている。
早朝、ゆばの老舗製造元である「ふじや」を訪ねた。朝5時には全員出社、ゆばの原料となる豆乳づくりを始めている。一晩水にさらした大豆を石臼ですりつぶし、大釜で煮込んで豆乳とおからに分離させる。できた豆乳を角鍋(ゆば槽)に注ぎ、90度前後の蒸気熱で温めると10分ほどで表面にちりめん皺(しわ)のような凹凸が現れる。これが「湯波」だ。鍋からすくった最初の一枚目と二枚目は柔らかく、刺身ゆばになる。口に含むと、ふわっ、よい香り。とろ~りとろけて、豆の味が下に残る。そして、三枚目からは巻きゆば用となる。
「日光の湯波は庶民の味。とくに煮物は各家庭で競った家庭の味でした」と、齋藤一敬社長。今では「ゆばクッキー」や「ゆば蕎麦」なども登場しており、ゆばの可能性は無限大に広がっていきそうだ。
Data
社名:日光湯波ふじや
住所:栃木県日光市下鉢石町809
電話:0288-54-0097
Infomation
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