このコーナーでは、下請取引に関する「かけこみ寺」に相談があった事例を参考に、中小企業の取引上のトラブルや疑問点の解決の基本的な考え方および留意点を解説します。今回は「一般取引関係」の「注文主より完成間近での取引中止の申し入れ」についての相談事例をご紹介します。
損害賠償請求に備え、記録を残すことが大切
Q. A社はアニメーションの制作を行っています。B社(建築設計)より、平成○年9月1日に建築関係の企画作成のうち、フラッシュアニメーションの制作を20万円、納期10月3日で請け負いました。打ち合わせを行い、9月28日に完成イメージを示しOKをもらいました。しかし、10月1日夕方にB社が「イメージに合わない、取引中止、代金5万円を支払う」と言ってきました。完成間近で取引を中止され、代金5万円というのは納得できません。
A. 契約の解除ができる場合については、契約書や民法などの法律で決まっています。また、契約の解除ができる場合には、請負者はそれまでに要した費用について、発注者に損害賠償を求めることができます。
仕事を進行し、完成間近(納期日の2日前)で取引中止(契約解除)になったため、A社にはこれまでに費やした手間賃、材料費などが発生しています。これらを計算して損害賠償請求したらよいでしょう。その際、B社が示している代金5万円が妥当なのかも検討してください。損害賠償請求は、書面ですることが適当であり、できれば内容証明郵便がよいでしょう。
損害については、請負者が損害項目、損害額を主張し、立証することになります。そのためには、日頃から材料費、手間賃など制作に要した費用を記録しておくことや、行程表など作業実績の分かる資料を作成しておくことが肝要です。支出に関しては、領収証などをきちんと保管しておくことも必要です。
当たり前のことですが、契約を締結するに当たり、契約相手が信用できる会社か調査しておくことも重要です。
提供
公益財団法人 全国中小企業取引振興協会(全取協・ぜんとりきょう)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営。
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