地域経済の成長目指す 事業承継にも力点
政府はこのほど、平成29年度予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は97兆4547億円と5年連続過去最大を更新。このうち、政府全体の中小企業対策費は、1810億円となった。中小企業の生産性向上に向けた支援のほか、事業承継問題への支援や産業集積づくりの強化などに重点が置かれた。特集では、中小企業・小規模事業者関係予算(29年度予算案)について紹介する。
1.経営力強化・生産性向上に向けた取組
○戦略的基盤技術高度化・連携支援事業130・0億円<29当初>
中小企業のイノベーション創出を図るため、中小企業・小規模事業者が産学官と共に連携して行う研究開発や新しいサービスモデルの開発などのための事業を支援する。
○小規模事業対策推進事業49・4億円<29当初>
商工会・商工会議所などの支援体制の確保や、地域資源を活用した地域経済活性化などの取り組みを支援する。
また、商工会・商工会議所が「経営発達支援計画」に基づいて実施する伴走型の小規模事業者支援を推進する。
○小規模事業者経営改善資金融資事業(マル経融資等)42・5億円<29当初>
商工会・商工会議所などの経営指導員が経営指導を行うことを条件に、日本政策金融公庫が小規模事業者に対し、無担保・無保証人・低利で融資を実施する。また、「経営発達支援計画」の認定を受けた商工会・商工会議所の経営指導を受ける小規模事業者に対し、同公庫が低利融資を実施する。
○中小企業・小規模事業者海外展開戦略支援事業23・9億円<29当初>
海外展開を目指す中小企業・小規模事業者に対し、事業計画の策定から海外展示会への出展などを通じた販路開拓、現地進出、進出後の課題や事業再編の対応までを一貫して戦略的に支援する。また、EPA(経済連携協定)に基づく原産地証明制度および海外認証に関する情報提供などを実施する。
○ふるさと名物応援事業13・5億円<29当初>
各地域にある地域資源を活用した「ふるさと名物」のブランド化などを支援する。
具体的には、①中小企業・小規模事業者が地域資源の活用や農林漁業者との連携によって行う商品・サービス開発・販路開拓、②海外展示会出展などを通じたブランド確立や海外販路開拓などを支援する。
○地域・まちなか商業活性化支援事業17・8億円<29当初>
商店街における公共的機能や買い物機能の維持・強化を図る全国モデル型の取り組みや、商店街内の個店などが連携して行う販路開拓や新製品開発を支援する。
加えて、コンパクトシティ化に取り組むまち(中心市街地)における地域への波及効果の高い複合商業施設の整備を支援する。
○中小企業連携組織対策支援事業6・8億円<29当初>
全国中小企業団体中央会に対し、組合に運営指導を行うための経費を補助する。これにより、組合の事業環境改善や展示会出展などにつなげていく。
2.活力ある担い手の拡大
○創業・事業承継支援事業11・0億円(新規)
産業競争力強化法の認定市区町村で創業を目指す創業者や創業支援事業者を支援するとともに、イベントの開催などにより創業機運の醸成を図る。また、事業承継ニーズの掘り起こし・早期準備の促進を図るとともに、事業承継(事業再生を伴うものを含む)を契機とした経営革新や事業転換を支援する。
○中小企業再生支援・事業引継ぎ支援事業61・1億円<29当初>
中小企業再生支援協議会において、財務上の問題を抱える中小企業者に対する窓口相談や金融機関との調整を含めた再生計画の策定を支援する。
また、事業引継ぎ支援センターにおいて、後継者問題を抱える中小企業者の事業引継ぎを図るための相談対応や後継者マッチングなどを実施する。
○中小企業・小規模事者ワンストップ総合支援54・8億円<29当初>
各都道府県に設置されているワンストップ相談窓口である「よろず支援拠点」を活用し、中小企業・小規模事業者が抱える経営課題に対する総合的な相談対応を行う。
また高度・専門的な課題に対応する専門家の派遣や、支援ポータルサイトによる支援施策の情報提供などを実施する。
○中小企業・小規模事業者人材対策事業16・7億円<29当初>
中小企業・小規模事業者が、必要とする人材を地域内外から発掘、マッチング、定着させることに対して支援する。
また、中小サービス業・ものづくり現場・まちづくりの中核を担う人材や、小規模事業者を支援する人材を育成する。
○独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金185・8億円<29当初>(うち復興庁計上6・5億円)
中小企業基盤整備機構において、中小企業・小規模事業者の「創業・新事業展開の促進」、「経営基盤の強化」、「経営環境の変化への円滑な対応」のための施策を行うとともに、東日本大震災により被災した中小企業・小規模事業者の復興支援に取り組む。
3.安定した事業環境の整備
○中小企業取引対策事業13・9億円<29当初>
下請事業者による連携を促進するなど中小企業・小規模事業者の振興を図るとともに、下請取引に関する相談の受け付けや、下請代金支払遅延等防止法の周知徹底・厳正な運用、官公需情報の提供など、取引の適正化を図る。
○消費税転嫁状況監視・検査体制強化等事業28・5億円<29当初>
中小企業・小規模事業者などが消費税を円滑に転嫁できるよう時限的に転嫁対策調査官(転嫁Gメン)を措置し、違反行為の監視・検査体制の強化を図る。
○消費税軽減税率対応窓口相談等事業19・4億円(新規)<29当初>
消費税軽減税率制度を円滑に実施するため、中小企業団体などと連携して、講習会・フォーラムの開催、相談窓口の設置や、専門家派遣を通じたきめ細かいサポートを行う。
○日本政策金融公庫補給金161・3億円<29当初>
日本政策金融公庫に対して、基準利率と特別利率の利率差および金利引き下げ分について、財政措置を行うことで、新たな事業の展開など、政策上の後押しが必要な分野における中小企業・小規模事業者の資金繰りの円滑化を図る。
○危機対応円滑化業務支援事業9・5億円<29当初>
災害、金融不安など、国が認定した「危機」に際して、日本政策金融公庫の信用供与(損失補填(ほてん)など)を受けた指定金融機関(商工中金など)が中小企業・小規模事業者に必要な資金を供給することで、資金繰りの円滑化を図る。
○中小企業信用補完制度関連補助・出資事業55・0億円<29当初>
※うち信用保証協会による経営支援対策費補助事業13・0億円<29当初>
経営状況が悪化している中小企業者の借り入れに対して信用保証協会を通じて保証を行うとともに、債務不履行時の協会の損失の一部を補填することで、中小企業者の資金繰りの円滑化を図る。また、経営改善・生産性向上に取り組む中小企業者などに、協会が地域金融機関と連携して経営支援を実施する。
4.災害からの復旧・復興
○中小企業組合等共同施設等災害復旧事業(中小企業等グループ補助金)【復興】東日本大震災被災地向け210・0億円<29当初>
東日本大震災により甚大な被害を受け、特に復興が遅れている地域(岩手県、宮城県、福島県の津波浸水地域および福島県の原発事故による避難指示の区域など)を対象に、中小企業などグループの復興事業計画に基づきグループに参加する事業者が行う施設復旧などの費用の4分の3(うち国が2分の1、県が4分の1)を補助する。
○東日本大震災復興特別貸付等【復興】68・0億円<29当初>
東日本大震災により被害を受けた中小企業・小規模事業者に対して、政府金融機関が「東日本大震災復興特別貸付」などの低利融資を行うために、必要な財政支援を行うことで、被災事業者の資金繰りを支援し、早期の事業・経営の再建を図る。
○中小企業再生支援事業【復興】13・9億円<29当初>
東日本大震災の被害を受けた中小企業・小規模事業者などの二重債務問題を含む再生支援に対応するため、被災事業者からの相談に応じるとともに、必要に応じて再生に向けた事業計画の策定支援・債権買取支援などを行う。
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