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ジョブ・カード制度の職業訓練8年間で4.6万人超を正規雇用

(表1)ジョブ・カード制度の職業訓練の活用実績

人材の育成・確保を支援 非正規社員キャリアアップを後押し

日本商工会議所では、北海道から沖縄県まで全国各地の111カ所の商工会議所と連携し、ジョブ・カード制度を普及する事業(厚生労働省の委託事業)を実施している。この事業を推進するため、「人材育成・確保支援の拠点」としての地域ジョブ・カードセンターと地域ジョブ・カードサポートセンターを各地商工会議所に設置し、訓練期間が3カ月以上6カ月以内の有期実習型訓練などのジョブ・カードを活用した職業訓練を実施する企業を支援。これまでに職業訓練を修了し、正規雇用された訓練生は、制度がスタートした平成20年度からの累計で4・6万人を超えている(本年5月31日現在)。正規雇用率は80%と非常に高く、有能な人材を育成したい企業と正社員の経験が少ない求職者とのマッチングを促進していることから、制度を活用した企業からは高く評価されている。

この特集では、ジョブ・カード制度の職業訓練の仕組みをはじめ、企業にとってのメリット、職業訓練を活用して訓練生を正規雇用した企業の声などを紹介する。

採用時のミスマッチなどを軽減

ジョブ・カードとは、求職者の職業能力を証明するA4判の大きさの3種類のシート(①キャリア・プランシート、②職務経歴シート、③職業能力証明シート)のことをいう。履歴書などにはない求職者に関する詳細な情報が記入されているので、短時間の採用面接では分からない求職者の職業レベルなどを客観的に評価できる。

訓練生に応募する求職者は、ジョブ・カード制度の職業訓練を開始する前に、キャリア・プランシートと職務経歴シート、職業能力証明(資格・免許)シート、職業能力証明(学習歴・訓練歴)シートにそれぞれ必要事項を記入する。その後、ハローワークなどに配置されている「ジョブ・カード作成アドバイザー」と訓練カリキュラムや訓練計画予定表などを活用した面接(キャリアコンサルティング)を行う。そして訓練生としての要件を満たしているかどうかを含め、求職者のキャリア形成のための第三者としてのアドバイスなどが記入されたキャリア・プランシートを渡される。その後これらのシートを持って職業訓練を実施する企業の経営者や担当者などと面接し、企業の基準に合えば訓練生として採用される。また、職業能力の評価を記入した職業能力証明(訓練成果・実務成果)シートは、職業訓練の終了後に企業から訓練生に渡される。

一方、職業訓練を実施する企業では、地域ジョブ・カードセンターや地域ジョブ・カードサポートセンターの担当者のアドバイスを受けながら訓練生の仕上がり像を検討し、OFF―JT(座学など)とOJT(実習)を効果的に組み合わせた訓練期間が3カ月から2年間までのいずれかに設定した訓練カリキュラムを作成する。この訓練カリキュラムの内容に沿った職業訓練を実施することによって訓練生の職業能力を高め、終了後は、職業能力証明(訓練成果・実務成果)シートを活用して訓練生の適性や職業能力を評価した上、正社員として継続雇用できる。このため、採用時のミスマッチや早期離職のリスクを軽減できるというメリットがある。加えて、一定の要件を満たす場合は、終了後に企業に対して国から助成金が支給されるので、職業訓練にかかるコスト負担を軽減できることもメリットの一つといえる。

また、訓練生はハローワークなどを通じて外部から募集するだけではなく、自社で勤務しているパートやアルバイトなどの非正規社員を正社員として登用するときにも活用できる。このように、人材の育成や能力開発に積極的な企業であることを対外的にPRできるというメリットもある。

訓練カリキュラムなどの作成を支援

職業訓練の実施を希望する企業に対しては、全国各地の111カ所の商工会議所に設置している地域ジョブ・カードセンターや地域ジョブ・カードサポートセンターが相談に応じている。地域ジョブ・カードセンターは、47都道府県ごとに1カ所ずつの商工会議所に設置しており、地域ジョブ・カードサポートセンターは、64カ所の商工会議所に設置している。日頃から企業のさまざまな経営相談などに対応している商工会議所は、これから職業訓練に取り組む企業にとって心強い味方といえる。

商工会議所では、リーフレットやポスター、会報、ホームページ、地元紙などの各種の広報媒体のほか、企業に対する説明会などによって、ジョブ・カード制度に賛同する「ジョブ・カード普及サポーター企業」を開拓・登録している。

このうち、職業訓練の実施を希望する企業に対しては、訓練計画や訓練カリキュラム、訓練計画予定表、職業能力証明(訓練成果・実務成果)シートなどの作成を支援しているほか、職業訓練を実施するに当たってのアドバイス、都道府県労働局(または、ハローワーク)に助成金を支給申請するためのアドバイスなど、企業が単独では対応が難しい各種の申請手続きなどを懇切丁寧にサポートしている。

なお、ジョブ・カード普及サポーター企業として登録すると、厚生労働省のホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/jobcard_system.htmlに企業名などが掲載されるので、企業のPRにもなる。

これまでに3・6万社で訓練を終了

ジョブ・カード制度の職業訓練のうち最も多く活用されているのは、訓練期間が3カ月以上6カ月以内の有期実習型訓練。これは、訓練期間が短いことに加え、受講料などがかかる外部の教育訓練機関に通わせることなく、社内の先輩社員などがOFF―JTとOJTの指導者になれるため。企業が訓練生と有期雇用契約した上で、訓練期間中の賃金を訓練生に支払いながら訓練を実施し、終了後に職業能力証明(訓練成果・実務成果)シートを活用して正規雇用するかどうかを判断する。

平成20年度に制度がスタートしてから、これまでに3・6万社が職業訓練を終了。これらの企業で訓練を修了した5・8万人の訓練生のうち、4・6万人が正規雇用されている(正規雇用率80%)。(表1)

職業訓練を実施した企業を規模別にみると、中小企業がほとんど(95・7%)を占めており、職業訓練を実施して非正規社員のキャリアアップを図り、正社員として採用する中小企業が年々増加している。これらのほとんどは、職業訓練を初めて実施した企業であり、終了後に再度、実施する企業も増えてきている。業種別では、「生活関連サービス業・娯楽業」が19・6%で最も多く、続いて、「卸売・小売業」が14・1%、「医療・福祉」が13・8%、「製造業」が9.5%などと多岐にわたっており、さまざまな業種での活用が進んでいる。

職業訓練を実施して訓練生を正規雇用した企業からは、「ミスマッチのない採用ができた」「職業訓練の実施は初めてで不安だったが、商工会議所の支援があったので助かった」「社内での人材育成の体系を構築できた」などと高く評価する声が寄せられている。こうした声を原稿(162社)や約10分間の動画(30社)にとりまとめた「活用事例」と全国の地域ジョブ・カードセンターと地域ジョブ・カードサポートセンターの連絡先などは、日本商工会議所のジョブ・カード制度の専用ホームページhttp://www.jc-center.jpで紹介している。