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パラリンピックのチカラ File 12 変幻自在のサーブを武器に初の大舞台で金メダルを目指す

古川 佳奈美(ふるかわ・かなみ)

1997年7月27日福岡県生まれ。博多卓球クラブ所属。

最新(4月1日時点)の世界ランキングは5位

「ジャパンオープン2019」時の古川選手。巧みなサーブと豪快なスマッシュで攻め抜いた 撮影:吉村もと

「初めてのパラリンピックの空気を楽しみたいです。憧れていた舞台に自分が本当に立てるとは夢のよう。まだ信じられないです……」

朗報が届いたのは7月1日。国際卓球連盟からの通知を受け、日本知的障がい者卓球連盟は東京パラリンピック代表内定選手を発表。古川佳奈美は世界ランキング5位で、わずか八つの知的障がいクラス女子の出場枠をつかみ取った。

試合前には軽くメイクをして「スイッチを入れる」という期待のホープは、攻撃的なスタイルが持ち味だ。得意技は「しゃがみこみサーブ」で、投げ上げたボールの落下に合わせて膝を曲げながら打つことで強い回転をかける技だが、古川はさらに、打球時の巧みなラケットさばきで五つの球種を打ち分ける。同じフォームから回転や曲がり方が異なるボールを繰り出し、相手の意表を突く。

体力も使う高度な技が使える選手は、知的障がいクラスではほとんどいない。古川も練習を始めた3年前は苦労したが、井保啓太コーチの「EXILEのダンスのように」というアドバイスで開眼。毎日、地道な動きを繰り返し、唯一無二の武器をモノにした。

今でこそ「勝つことが楽しい」と明るいが、幼い頃は他者とのコミュニケーションや言葉の理解に苦しんだ。小学4年生で軽度の知的障がいと自閉症と診断されたが、中学の部活で卓球と出会い、光が差した。「楽しい!」。積極性が芽生え、笑顔も増えて自分らしく振る舞えるようになった。

高校でも部活で力をつけ、卒業後は地元のクラブに通い出した。井保コーチと出会い、二人三脚で急成長。明太子工場での仕事と両立させながら、2015年に国際戦デビューし、17年にはアジア大会優勝。18年には世界選手権で銅メダルも獲得。知的障がいクラスのシングルスでは日本勢史上初のメダルという快挙だった。

進化は続く。19年夏、東京で開かれた「ジャパンオープン」でも格上選手を次々と撃破して銅メダルを獲得。過去1セットも取れなかった世界女王には惜敗したが、フルセットに持ち込む粘りを見せた。着実にランキングポイントを積み上げた。

「次の夢は東京パラの金メダル。全力で頑張ります」

卓球

障がいに応じた多様なプレースタイルと、相手を研究した多彩な戦術に注目

パラリンピックでは肢体不自由と知的障がいが対象で、障がいの種類や程度により、車いす(クラス1~5)、立位(同6~10)、知的障がい(同11)の11クラスに分かれて戦う。ルールはオリンピックとほぼ同じだが、義足や杖など補助具の使用やラケットを口にくわえたり、テープでの固定を認めるなど、障がいを考慮した特有のルールもある。

競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/table-tennis/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/

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