パラリンピックのチカラ File 11 選手を支える裏方から世界を目指すアスリートへの転身

田中 光哉 (たなか・みつや)

1992年7月22日福岡県出身。先天性両上肢尺側欠損障害。ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社所属

東京パラリンピック代表選手最終選考会「サンマリエカップ」で、力強い蹴りを繰り出す田中光哉選手(右) 撮影:吉村もと

東京パラリンピックで正式競技としてデビューする2競技のひとつ、テコンドー。その初代王者への挑戦権を、田中光哉は今年1月、自らつかみとった。強烈な蹴りを武器にポイントを重ね、一発勝負の国内最終選考会でライバルたちを撃破。日本代表に内定した。

「目標は金メダル。新競技の面白さも伝えられるよう、結果を求めて頑張りたい」

競技歴は約3年。パラアスリートとしては異色の経歴をもつ。生まれつき肘から下の骨や指の一部がないという障がいがあったが、スポーツは大好きで、小学4年生から始めたサッカーには大学まで夢中になった。

転機は2013年。東京パラの開催が決まると、「関わりたい!」と強く思い、大学卒業後は東京都障害者スポーツ協会に入職。希望通りパラスポーツの普及や選手発掘事業に携わる。裏方として東京パラと向き合ううちに芽生えたのが、「選手として出場したい」という大志だった。

テコンドーを選んだのは上肢障がいを対象とした新競技で、体験してみると面白く、自分を生かせる競技だと感じたからだ。

すぐに、道場に入門した。現在も師事する洪君錫(ホン・グンソク)師範は、田中が初心者だからこそ、厳しく指導した。本格的なキック練習に移るまで数カ月、基本のステップや技術を徹底して教え込まれた。

持ち前のセンスと真摯(しんし)な練習態度で急成長を遂げ、1年後には国際大会で優勝も果たす。得意技はサッカーで鍛えた俊敏性や脚力を生かしたステップから繰り出される前蹴りだ。

東京パラ出場を最優先に、変化も厭(いと)わない。18年には競技環境を充実させるため転職し、19年には75㎏以下級から61㎏以下級への階級変更も決断。大柄な海外勢に対し、軽量級のほうが176㎝の体躯(たいく)をより生かせるはずと、3カ月で13㎏もの過酷な減量を成功させた。

コロナ禍で東京パラは1年延期になったが、さらに進化できる期間とポジティブに受け止め、覚悟を新たにする。

「環境に感謝しながらその責任感を忘れず、必ずメダルを獲得できるよう、今できることを考えて行動していきます」

ブレのない目標とひたむきな努力の先に、夢の舞台が待っている。

テコンドー

迫力あるキックの応酬は別名「足のボクシング」

スピード感と華麗さも魅力

東京パラリンピックでは上肢に障がいのある選手によるキョルギ(組手)が実施される。試合は1辺3・3mの正八角形のコートで2分×3ラウンド(インターバル1分)。電子防具の着用や有効なキックにポイントが与えられ、その合計得点で競うなど主なルールはオリンピックと同じだが、パンチは無効、頭部への攻撃は反則など特有のルールもある。 競技紹介はこちら

競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/taekwondo/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/
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