パラリンピックのチカラ File 13 覚悟のクラス転向で世界上位に 車いすテニス・クアードの新エース

菅野 浩二 (すげの・こうじ)

1981年8月24日埼玉県生まれ。リクルート所属。

世界ランキング(2020年3月16日時点)はクアード男子シングルス5位、同ダブルス6位

クアードとして初の世界挑戦となった年の飯塚国際車いすテニス大会(©Japan Open 2018)での菅野浩二選手。右握力の弱さは手袋で補い、摩擦力で車いすを操る 撮影:吉村もと

車いすテニスは、「男子」クラスの国枝慎吾(ユニクロ)や「女子」の上地結衣(三井住友銀行)らの活躍もあり、日本での知名度も高いが、パラリンピックではもう一つ、「クアード」という男女混合のクラスも実施されている。

「クアード」とは四肢まひを意味し、ルールでは両手両足のうち三つ以上に障がいのある選手を対象とする。テーピングでラケットを手に固定したり、障がいの程度により電動車いすの使用が認められることもある。手指の障がいのため車いすをこぎにくいが、スピードやパワーのみに頼らない、戦術や駆け引きを駆使した頭脳戦にも注目したい。

そんなクアードの日本のエースとして期待されているのが、菅野浩二だ。東京パラリンピックのクアードの出場枠は16で、来年6月7日時点の世界ランキングで上位12位以内の選手は自動的に内定する。菅野は現在5位。今後、国際大会の成績により変動もありうるが、十分に狙える位置にいる。

高校1年のとき、交通事故で頸髄(けいずい)を損傷し、首から下にまひが残って車いす生活になった。20歳頃から車いすテニスを始めたが、最初は趣味の範囲で楽しみ、時折、国内大会の「男子」クラスに出場する程度だった。

転機は2016年末。握力もかなり弱く「クアード」の対象でもあった菅野は、ベテランのパラリンピアン齋田悟司(シグマクシス)から「東京パラも狙える」と助言された。当初は悩んだが、「可能性があるなら後悔したくない」と覚悟を決め、クラス分け審査を受検。17年から「クアード」に転向すると、18年アジアパラ大会で金(ダブルス)、銀(シングルス)のメダル獲得、19年の国別対抗戦「ワールドチームカップ」では日本の大黒柱として初優勝にも貢献した。

武器は持ち前の身体能力を生かしたチェアワークとパワーショット。相手の返球コースを先回りする予測力にも長け、「世界ではずる賢いプレーも必要」と相手を翻弄(ほんろう)するフェイントにも磨きをかける。

「東京パラでは、サポートしてくれた会社や家族に、結果という形で恩返ししたい」

目指すはもちろん金メダル。延期を追い風に、さらなる進化を誓う。

車いすテニス

車いすを操り、コート内を自由自在。激しいラリーや頭脳プレーに注目!

2バウンド以内での返球が認められている以外は、コートの広さやネットの高さをはじめ、ルールはオリンピックのテニスと同じなので観戦しやすい。見どころの一つはラケット片手に車いすを巧みに操る「チェアワーク」。急加速や方向転換のほか、車いすでは真横に動けないため、素早く回り込むようにしてボールを追う。クラス別にシングルスとダブルスが行われる。

競技紹介 https://tokyo2020.org/ja/paralympics/sports/wheelchair-tennis/

星野 恭子(ほしの・きょうこ) スポーツライター http://hoshinokyoko.com/
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