日本商工会議所は8月31日、「2021年度中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望」を取りまとめ、関係各方面に提出した。同意見書では、コロナ禍の中、「地域経済や雇用を支える中小企業の経営者が今後も事業継続に希望を持つことができるよう、より一層の支援策を迅速かつ継続して行うことが極めて重要」と主張している。日商の西村貞一中小企業委員長(大阪商工会議所副会頭)は同日、中小企業庁の那須野太次長に意見書を手交し、実現を強く求めた。
アフターコロナ見据え
同意見書では、新型コロナウイルスの影響の長期化を踏まえた中小企業の事業継続支援とコロナ禍の先を見据えた地方創生の推進をはじめ、中小企業の生産性向上、地域活性化、大規模自然災害からの復旧・復興、東日本大震災からの確実な復興・創生などに関し要望を取りまとめた。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、わが国経済は、コロナショックというべき未曾有の影響を受けている。感染拡大防止と経済活動を両立しつつ、正常化を目指すステージへと移行したものの、再び全国で新規感染者が増加し、中小企業の事業継続と雇用維持の努力は限界に達しつつある。今後、さらなる感染拡大が続き、再度の全国規模の緊急事態宣言という事態に陥れば、倒産・廃業が急増し、わが国経済の崩壊を招きかねないことが、強く懸念される。
政府はこれまで、大型の緊急経済対策などにより、事業者支援に力強く取り組んできた。全国の商工会議所は新型コロナに関する経営相談窓口を設置し、事業者に寄り添った支援を実施。地域経済や雇用を支える中小企業の経営者の心が折れずに、今後も事業継続に希望を持つことができるよう、より一層の支援策を迅速かつ継続して行うことが極めて重要としている。
当面は、感染症対策と経済活動の両立が必要であり、新たな感染の波が発生しても再開した活動のレベルを極力落とさずに済むよう、検査体制の拡充と医療提供体制の安定化が急務である。新型コロナの感染が一定の収束を見通せた段階では、本格的に幅広い消費意欲を喚起するような対策や、地域経済の活性化に向けた取り組みが重要と指摘している。
一方、人口減少・少子高齢化や地域経済の疲弊など、構造的な課題にも直面している。課題解決の重要な鍵は、今や世界第31位にまで落ち込んだ1人当たりGDPの向上であり、デジタル技術の実装、付加価値の向上の必要性を強調。大企業と中小企業の新たな共存共栄関係の構築により、コロナ禍後の未来を切り開くことも肝心としている。
また、コロナ禍によって東京一極集中のリスクやコストが予想以上に大きいことが判明し、地方への関心が高まっている。短期的効率性から長期的耐久性へのシフトや集積と分散のリバランスの観点から、地方移住促進や魅力的な地域づくりなどにより、地方創生の推進に改めて強力に取り組むことが必要としている。
さらに、今年度も激甚化する大規模自然災害が頻発しており、被災した中小企業の迅速な事業再開支援を行う必要がある。併せて、発生から間もなく10年となる東日本大震災からの確実な復興・創生を図るための支援を求めている。
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