持続的な成長を実現する1年に 日本商工会議所第119回通常会員総会 三村会頭あいさつ

あいさつする三村会頭

本日は、日本商工会議所第119回通常会員総会を、ご来賓をはじめ、全国各地の商工会議所から、多数の皆さまにご出席いただき、盛大に開催することができ、誠にありがとうございます。

地域から期待される任務の重要性を再認識

昨年11月に日本商工会議所会頭に就任して、ちょうど4か月になりました。この間、9ブロックの商工会議所や被災地域の商工会議所等を訪問し、様々な取り組みを拝見しました。独創的なアイデアや創意工夫によって課題解決を図り、力強く成長している中小企業がある一方で、自らの潜在能力を十分に発揮できず、苦しい状況に直面している事業者も多数あるという現実を目の当たりにしました。また、観光、伝統文化など地域が有する資源を効果的に活用し、地域の活性化につなげている事例や、まちの疲弊をどのように食いとめるかという困難な課題に真正面から取り組んでいる話も伺いました。いずれの場面においても、商工会議所が熱意をもって取り組んでいる姿に喜びを感じるとともに、地域から大きな期待を寄せられている商工会議所の任務の大切さを改めて実感しました。

各地域を訪問し、改めて認識した課題等を踏まえ、新年度に向け、商工会議所としての基本的な取り組み方針を述べたいと思います。

復興の加速化と福島再生が不可欠

その第一は、復興の加速化と福島再生であります。

被災地域の商工会議所を訪問し、生の声をお聞きしました。また、沿岸部15商工会議所・被災5県連合会とも意見交換を行いました。津波被害を受けた地域については、「復旧」を基本としたこれまでの取り組みを、「復興」を早期化する施策展開に見直すべきことを痛感いたしました。福島においては、企業立地の促進や除染の適正化、風評被害対策の確実な実行が不可欠であります。震災後3年がたちましたが、決して風化させることなく、一つひとつの課題を各論として解いていかなければなりません。そのためには、引き続き、商工会議所として被災地の生の声を丹念に取りまとめ、強く政府に訴えてまいります。各地商工会議所においても、遊休機械マッチングや被災企業の販路拡大を中心に、引き続きの多大なるご支援をお願いいたします。

成長に向けた基盤の早急な整備を

第二に、4月の消費税率引き上げを乗り越えるとともに、持続的な成長の実現に向けて必要となる基盤の整備を早急に図らなければなりません。

まず、消費税率の引き上げをいかに克服するかということが、当面の大きな課題であります。価格転嫁が円滑にできなければ、利益率の低い中小企業にとっては、経営が極めて厳しい状況になります。政府において、監視強化など円滑な転嫁対策に万全を期していただくとともに、商工会議所としても、引き続き、中小企業の価格転嫁を徹底して支援してまいります。

日本の成長する力、すなわち潜在成長率を上げるためには、「国内の資本蓄積」、「労働人口」、「生産性」をそれぞれ向上させる必要があります。我が国企業の国内投資を促進させるとともに、対日直接投資を拡大するためにも、主要国に比べ最も高い法人実効税率の引き下げ、安定的で低廉な電力・エネルギー供給、TPP等のレベルの高い経済連携協定の早期妥結は待ったなしの課題であります。また生産性向上という観点からも、効率性の高い強い農林水産業の実現、聖域のない規制・制度改革も早急に実行しなければなりません。

さらに、労働人口については、我が国は少子化という深刻な危機に直面しています。全国レベルでの人口減に加え、地方においては、東京さらには札幌や福岡といった中核都市への人口流出により、二重の人口減少が深刻化しています。

このまま何も手を打たないと50年後には、労働人口が約3500万人減少し、500を超える市町村が消滅するという試算もあり、当然、成長率を大きく押し下げる要因となります。女性や高齢者のさらなる活用といった労働人口の増は本質的な成長戦略ですが、もっと根本的に、「実効性のある少子化対策」、労働人口減を補う、IT化や教育の充実といった「抜本的な生産性向上」など、ありとあらゆる対策を総動員する必要があります。今、対策を打たなければ、将来にわたり取り返しのつかないことになります。

商工会議所としては、こうした成長を実現するため基盤となる課題に対し、積極的に政策提言をまとめて、政府等に発信してまいります。

第三に、日本の成長の重要な原動力となるのは、「中小企業の発展」と「地域の再生」であります。そのためには、事業の多様性や社会の流動性を生み出す中小企業の「成長に向けた挑戦」と、農林水産業や観光といった地域の豊かな資源を、他産業と有機的に結び付け、「地域の付加価値創造」を実現することが不可欠であります。

成長を実行に移す主役はあくまで民間であります。そしてその民間の大宗を占め、日本の産業構造の強みでもある分厚い中小企業層が力を発揮することが、日本の成長の鍵を握っています。

私は日本の中小企業は本質的に強いと思っています。いくつかの根拠がありますが、長寿企業という切り口もそのひとつです。日本には帝国データバンクの調査で創立100年以上の老舗が約2万社あるなど、全世界でも群を抜いて長寿企業が多い老舗大国です。大きな混乱が少なかった等の外部要因もありますが、中小企業から誕生した企業がこれほどまでに長く事業を継続できたのは、環境変化に対する柔軟かつ迅速な経営判断が連綿と行われ、鍛練を積み重ねてきたことによると思われます。

もちろん、大企業に比べ、中小企業は海外展開の知見・ノウハウが乏しい、人材の確保が難しい、消費税に代表される価格転嫁が円滑に行えないといった弱点があります。中小企業も自助努力で成長するのが大原則でありますが、自分の力では克服できない構造的な弱みについては、必要な政策を導入するなど、社会的な支援策も必要となります。これに対しては、商工会議所が「現場主義」と「双方向主義」を駆使して、的を射た中小企業支援策を実現していかなければなりません。

地域の再生は、人口減少という逆風のなか、一筋縄ではいかない大きな課題でありますが、地域の再生なくして日本の発展はありません。農林水産業や観光資源等、今保有している資源を如何にうまく地域の再生に結び付けていくかが鍵であります。商工会議所が中心となって知恵を絞り、様々な保有資源をひとつのストーリーにまとめて売り出すことが必要です。我々の強みである、中立的な立場で多くの関係者をまとめ上げる力をいかんなく発揮できる領域だと思いますので、各会議所において、知恵を絞ると同時に強いリーダーシップを発揮していただきたいと思います。

ネットワークを活用し商工会議所活動を推進

最後に、商工会議所の今後の活動方針について申し述べます。

商工会議所のミッションは、会員企業の繁栄、地域の発展、わが国経済社会の発展の3点にあります。この3つが同一方向を向いていることの重要性はすでに申しあげました。

そのためには、まず、第一に商工会議所のネットワーク力を最大限に発揮し、連携を強化していくことが必要であります。全国514商工会議所、126万会員という膨大かつ、きめ細かなネットワークが商工会議所の強みであります。他の商工会議所のよい事例や工夫の横展開を進めるとともに、商工会議所同士で販路開拓などの共同事業に取り組むことが重要です。

また、何よりも、会員数の増加はネットワーク力の強化につながります。事業者のニーズを適確に捉え、それを商工会議所の活動に反映させていくことで、商工会議所に対する理解と信頼も深まります。各地商工会議所においては、会員訪問に積極的に取り組むことをはじめ、非会員も含めた地域での対話の機会をさらに増やしていただきたいと存じます。

日本商工会議所も、各地商工会議所の連携強化や会員増強に対する支援を行ってまいります。

第二に、商工会議所の「人材力」を強化していくことが重要であります。

商工会議所は、行政、企業をはじめ、地域から高い信頼を寄せられている存在であり、その組織の中核である会頭をはじめとする役員・議員の皆様には、自身の人材力とリーダーシップを存分に発揮いただき、地域経済をけん引していただきたいと思います。

日本商工会議所は、各地商工会議所の役員・議員のネットワーク構築を推進し、人材力の強化を図ってまいる所存です。

また、経営支援の担い手である経営指導員をはじめ、職員の皆さんには、広範、多様かつ専門的な課題に対応できる能力が求められていることから、全国の商工会議所職員の人材育成、能力向上に徹底して取り組んでまいります。

以上、新年度を迎えるにあたり、所信の一端を申し述べました。

間もなくスタートする平成26年度は、デフレマインドから脱却し、持続的な成長を実現していく一年にしていかなければなりません。わが国が力強く飛躍できるかは、我々民間の双肩にかかっています。商工会議所として覚悟をもって、成長実現に向け、政策提言、事業活動等に全力をあげなければなりません。

私は年頭にあたり、国民各層が、日本の強みを再認識し、危機感をもって世界の一流国を目指して行動を始めれば、日本の復興は必ず成し遂げられると述べました。514商工会議所も自らの強みに改めて自信を持ち、積極果敢に活動に邁進すれば、地域も含めた日本の底力を上げる大きな原動力となります。

自ら前に進めるという気概と、自信と明るさを持ち、ともに頑張ってまいりましょう。

皆様の多大なるご支援、ご協力をお願いして、私の挨拶といたします。

(平成26年3月20日)