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提言書「地域の観光産業がコロナ禍を乗り越え、前に進むために」(概要) 2020年11月10日 日本商工会議所

【総論】

観光立国実現の前に立ちはだかった新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、4000万人の目標達成に向けて順調に伸びていたインバウンドはもとよりわが国の観光は甚大な影響を受けた。

地域の祭りや花火大会(ともに、動員数トップ10のイベントだけでもそれぞれ2千万人超)は軒並み中止、17兆円超のイベント消費(2019年。一般社団法人日本イベント産業振興協会調べ)の多くが消え、外国人が押し寄せていた商店街も人通りがなくなった。接触型ビジネスともいえる観光産業・地域は、目に見えぬ感染不安を抱えながら、引き続き極めて厳しい経営環境に置かれている。

各事業者は、各種融資や雇用調整助成金、持続化給付金などを最大限活用し、生き残りや雇用維持のために必死の努力をしているが、インバウンド需要を見込んで実施した設備投資の回収が困難になっていることなどもあり、広く旅行・観光需要が回復しない限り、事業継続が難しくなる懸念がある。上記施策効果を検証の上、雇用調整助成金の特例措置などの継続や、これまでの投資によって過剰債務に陥っている事業者に対する金融支援を行いつつ、国を挙げて感染拡大防止と社会経済活動を両立できる環境を整備することが最優先の課題である。

Go Toキャンペーン事業の延長、都市・地方間と事業者間格差の是正を

そうした中、Go Toキャンペーンのトラベル事業の実施が10月1日から全国に広がり、7月22日から10月15日までの利用が少なくとも延べ3138万人泊、割引総額は1397億円を超えた。また、10月初旬から開始されたGo Toイート事業は、オンライン予約事業が23日間で1535万人、プレミアム付き食事券事業は販売開始地域がまだ半数にも満たない状況でも給付額換算で47億円分の販売がなされているなどと、予算上の想定を上回るペースで利用が進んでいる。

一方で、Go Toトラベル事業における高級宿泊施設への需要の偏りや、大都市に比した地方での利用の伸び悩み、Go Toキャンペーン各事業への事業者の参加手続きにおける重複申請など諸課題が指摘されており、中小企業・小規模事業者においてGo Toキャンペーン事業の登録が進んでいないとの声も多く聞かれる。政府には、事業実施を進めながら常に施策の効果を把握・検証し、消費効果が地方や中小規模の事業者に広く行き渡るような改善を不断に行うことを求めたい。その上で、年度にかかわらず新型コロナウイルス感染問題の収束が見込まれるまで、引き続きGo Toキャンペーン事業を延長されたい。

加えて、規模の小さい事業者においては、売り上げが回復しない中で、換気や客および従業員の消毒・衛生管理など感染拡大防止対策に対するコストが継続的な負担となっており、引き続き国の支援拡充が必要である。

観光産業における前向きな投資などに対する強力な政策支援を

旅行・観光は、人々における日常を離れた行楽や興味・好奇心を満たそうとする心の行動であり、サービス提供側にはそうしたニーズに的確に対応できる態勢が求められる。事業者側が現下の極めて厳しい経営環境を乗り切り、withコロナを前提とした新たな旅行方法・観光メニューの提示や接客サービスおよび施設運営などに向けた努力を引き続き進めることを期待したい。

例えば、感染拡大防止を徹底しつつ、今後回復していくであろうリピーターやインバウンド、MICEやビジネスの前後における旅行・消費需要に適切に応えていくことが求められる。また、生産性向上やオンラインによるプロモーションなどを進めるためのデジタル技術の活用、付加価値を求める消費需要に応え得る宿泊施設の改修、コロナ禍を契機に加速し始めたワーケーションなどを推進することが重要である。売り上げが回復しない中でも経営・事業の向上を図ろうとする事業者のそうした前向きな投資などに対し、政府による強力な政策支援をお願いしたい。

国際的な人の往来増加と東京オリンピック・パラリンピック実現に向けた環境整備を

政府は今後、人々の国際的往来について、ビジネス面から徐々に再開・拡大していくこととしている。これを円滑に進めるためには、訪日外国人の入国時の抗原検査やPCR検査など検査体制や簡易検査の拡充はもとより、日本滞在中における新型コロナウイルス感染判明者に対する具体的な対処方針の早急な整備とその周知徹底が必要である。

わが国が目指す観光立国実現のため、そうした感染拡大防止に最大限の努力を払いつつ、ビジネス往来の増加やこれにより明らかとなる課題の克服などの検証を基に、観光面でのインバウンドの再拡大を図っていくことが重要である。

こうしたことを通じて、世界の人々に東日本大震災からの復興をアピールする場として招致を実現した東京2020大会を、新型コロナの感染拡大防止と社会経済活動の両立を実現する目標とも位置付け、国を挙げて開催に向けた環境整備を加速されたい。

【各論】

1.Go Toキャンペーン事業の期間延長と地方への誘客重視を

〇自立的な需要回復期までのGo Toキャンペーン事業など施策の継続・拡充

・Go Toキャンペーン事業をはじめ消費誘発効果の大きい施策は、その需要拡大効果が十分に行き渡るまで実施期限を延長されたい

〇Go Toトラベル事業における地方・中小宿泊事業者への誘客促進

・地域別の予算割り当ての機動的な対応や定額補助制度の導入など、当該事業の恩恵をあらゆる地域や事業者に広く行き渡らせるようにしていただきたい

〇そのほか、デジタル活用による申請手続きの一本化、実施事業者への入金最速化、利用状況・消費誘発効果の不断の検証、既存債務の返済に困難をきたしている観光事業者への特段の金融支援など

2.観光事業者の感染対策支援、ルールの啓発強化、感染データの検証

〇感染拡大防止対策の普及徹底のための費用支援

・観光事業者に対するソーシャルディスタンス確保、換気対策、従業員の飛沫(ひまつ)拡散防止・消毒対応などの対策費用支援の継続・拡充が必要である

〇蓄積された知見の整理・提示、旅のエチケットの国民的理解の啓発強化

・旅行者と事業者双方による感染拡大防止対策の徹底と無用な不安を払拭(ふっしょく)するために正確かつ分かりやすい情報周知の継続が必要である。また、マスク着用・外出手控えなど必要な対策に協力する意識を高めてもらう啓発強化を継続的に進められたい

〇その他、旅先で感染が判明した旅行者の対応に関する政府による指針策定・徹底、新型コロナウイルスの感染経路・場面などに関するデータの検証とリスクの見える化など

3.国際往来の促進と東京2020大会に向けた感染拡大防止対策の徹底

〇訪日外国人の入国時検査拡充、管理体制および滞在中の感染対策強化

・入国時におけるPCR検査や抗原検査の体制整備・実施拡大と検査の効率化、結果判定のスピードアップ化を図られたい

・日本の衛生習慣の認知度向上など、訪日外国人に対する感染対策の周知など

〇東京2020大会開催に向けた実施方法の検証

〇大会開催に万全を期すため、国内外で行われる大規模イベントの実施検証・情報収集を通じて、適切な競技・観覧方法などを確立すべき

〇そのほか、検査等証明書の世界標準化に向けた検討など

4.地方におけるネットの活用やリモートワーク需要の取り込み促進

〇ネットやIT活用による新たなサービス、プロモーションの強化

・ネット予約システム導入、キャッシュレス決済普及に向けた支援拡充を図られたい

・デジタル技術を活用した旅行の疑似体験が、将来の観光・旅行やビジネス商談につながるような仕組みづくりの支援など

〇ワーケーションの推進、リモートオフィス・ワーカーの受け入れ環境整備

・地方滞在型のテレワーク(主に都心部の企業、社員)やワーケーションを呼び込むためのワークスペースやネットワーク環境整備に対する支援拡充など

5.観光誘客促進・事業継続のためのハード・ソフト両面の施策拡充

〇新たな需要獲得に向けた宿泊施設などの改修促進

・宿泊施設におけるwithコロナ対応や富裕外国人の受け入れも想定した設備改修への支援など

〇地域色を生かした魅力ある誘客コンテンツ開発

・地域資源である自然や景観、食材などを活用した農商工連携など地域の多様な主体が関わる観光振興の推進など

〇MICE客、ブレジャー需要(出張時の観光・飲食など)への対応

〇観光地における危機管理体制の整備促進支援

○大規模自然災害や感染症発生時の事業継続を可能とするBCP策定促進など

〇そのほか、地域内事業連携による関係事業者の共存共栄促進、観光統計データの整備およびデータ提供プラットフォームの構築、エリア連携、広域連携による誘客促進、ルート開発、生産性向上、バリア低減のためのAI・ロボット技術の活用、効果的な情報発信とその検証などを推進するための支援を一層強化されたい

6.地方分散の促進、旅行者の利便性向上に資する交通網の整備拡充

〇観光需要の地方分散に資する二次・三次交通網の整備拡充

・主要交通拠点から観光地および観光地間のアクセス改善に対する取り組みの支援など

〇旅行者の利便性向上に資する交通機関間の有機的連携の強化

○空港と新幹線などの高速交通機関と地域交通機関および高速交通機関間の接続改善の取り組みへの支援など

〇移動も旅の目的となる取り組みへの支援

・地域のバスや鉄道などをレストランバス、イベント・食事列車といった観光コンテンツへと高付加価値化する事業者や地域の取り組みへの支援

提言書全文は、https://www.jcci.or.jp/news/2020/1110140000.html参照。