政府は2020年12月25日に第6回成長戦略会議を首相官邸で開催し、日本商工会議所の三村明夫会頭が出席した。議長の加藤勝信内閣官房長官、副議長の梶山弘志経済産業大臣および西村康稔経済再生担当大臣のほか、麻生太郎金融担当大臣兼財務大臣、赤羽一嘉国土交通大臣、野上浩太郎農林水産大臣、小泉進次郎環境大臣らが参加。2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略について議論した。
三村会頭は「グリーン成長戦略は『経済と環境の好循環』をつくる産業政策であり、経済成長を阻害しないことが大前提」と強調。「低コストと安定供給が特に重要であり、エネルギー政策の基本である『3E+S』をしっかり踏まえるべき。コストや安定供給に関する厳しい現実を認識することで目標をより的確に設定でき、高いハードルを乗り越えるためのイノベーションも生み出される」との認識を示した。
カーボンプライシングについては、企業は既に国際的に見て割高なエネルギーコストを負担しており、特に震災以降、高止まりする電力料金が経営に大きな影響を及ぼす中で、さらなるコスト負担増につながる制度の導入には商工会議所として強く反対する姿勢を示した。制度設計に当たっては、ペナライズする規制的手法より、事業者の前向きな対応を引き出すインセンティブ手法によって進めるよう求めた。
また、再生可能エネルギーの普及促進に当たっては、国内産業の育成を含む経済成長効果を最大化するために、戦略的な制度設計が必要と表明。その上で、「わが国では、2012年からFIT制度が導入され、特に太陽光発電の普及に貢献した。一方で、国民負担となる賦課金は年間2・4兆円、1家庭当たり年間約1万円、累計では13兆円規模にも上り、20年間にわたる制度のため今後も累増する。さらに、かつて日本製が高いシェアを誇った太陽光パネルは80%以上が輸入品となっており、国内経済に寄与しているとは言い難い」と述べるとともに、「FIT制度について、良かった点と反省点とをしっかり総括して、洋上風力など再生可能エネルギー普及策の設計に最大限生かしてほしい」との考えを示した。
原子力については、2050年のカーボンニュートラル宣言自体、原子力政策の取り組みへの政府の覚悟の表れと受け止めており、資料に「最大限活用」と明記されたことを評価した。「さらに原子力の電源構成目標を具体的に明記し、実現への方策をしっかり準備すべき」との考えを示し、安全性を確保した上での原発再稼働、設備利用率の向上、リプレース・新増設など多くの課題に対して、政府が前面に立って早急に取り組むことに期待を寄せた。
12月1日に開催された第5回同会議では実行計画案について審議した(実行計画は別掲)。
11月19日の第4回同会議では生産性の向上、足腰の強い中小企業の構築、ビジネス上のイノベーションやデジタル関連投資の推進、国際金融都市、コーポレートガバナンス、ロボットなどについて議論した。
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