政府は2月17日、第7回成長戦略会議を首相官邸で開催した。日本商工会議所からは、三村明夫会頭が出席。コロナ禍の経済への影響と成長戦略や、新たな成長に向けた競争政策の在り方について議論した。
三村会頭は成長戦略を考える際に、内需の太宗を占める「消費」に着目し、消費低迷の要因をしっかり分析することの重要性を強調した。「消費の拡大は国内マーケットの拡大に直結する。設備投資を促し、生産性向上に取り組むインセンティブを高めるなど、供給面を含めて経済成長を高める」と言及。昨年の4-6月期に、特別定額給付金が支給された中で消費が大幅に減少、貯蓄が増加し、貯蓄率が21・8%とかつてない高さに急上昇したことが大きく報じられたことに触れ、「この急騰ぶりはもちろん一過性の現象だが、消費性向の低下、すなわち貯蓄性向の上昇はここ7~8年来のトレンドであり、特に若年層および高齢者に顕著である。アベノミクス以降の景気回復局面で、賃金が緩やかに上昇する中でも消費性向は明らかに下落傾向にあり、消費の伸びは抑制されている」と指摘した。仮説としながらも、その要因を国民、とりわけ若者および高齢者が抱く将来不安を挙げた。「一つは社会保障制度。将来的に年金がどうなるのかという心配が、先行き不安として消費抑制につながっている。もう一つは、潜在成長率がゼロ%に留まる日本経済の先行きへの悲観ではないだろうか」との認識を示した。その上で、政府に、消費性向が下がっている要因を深く分析すること、将来不安を払拭(ふっしょく)するために何をすべきかについて成長戦略としても真剣に検討することを要望した。
また、競争政策について、「デジタル化の進展やプラットフォーム企業の成長などの社会の変化に合わせ、競争政策の在り方を改めて考えることは適切である」との考えを示した。日本の成長戦略として必要な競争法上の課題として、第一にプラットフォーム企業向けの競争政策、第二に規制分野における競争原理の導入、第三に国内市場が縮小する中での業界ごとの企業の統合・再編による国際競争力の維持・強化を挙げた。今回の議論は、この三つにそれぞれ分けて取り組むべきであり、第三の論点も極めて重要とした。公正取引委員会の企業結合審査では、「企業結合後に競争が制限されるかを審査するが、グローバル化の中では日本も国際市場の一部であり、輸出入の拡大や代替品の登場など、市場の変化はかつてないほど早く大きくなっており、動態的な経済分析が必要である。これまでの審査では、日本国内のみの市場シェアや需要家の声に頼る部分が大きく、経済分析が果たす役割は必ずしも大きくない印象がある」と述べた。経済分析能力を含めた公正取引委員会の企業結合審査をさらに高度化していくために、人材の育成・補充、手続きのさらなる透明性を求めた。
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