緊急事態宣言の再発令や長引く感染拡大によって、経済活動が抑制された状態が継続し、売り上げが回復していません。特に、飲食・宿泊サービス業などの倒産・廃業が増加しています。そこで、日本商工会議所は3月18日、「経済的苦境が続く事業者への支援に向けた緊急要望」を政府および与党関係各所に提出しました。本緊急要望の概要を紹介します。
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緊急要望の概要
1 経済的苦境が続く事業者への支援の拡充
(1) 飲食店などの事業規模に応じた時短要請協力金の制度見直し
事業継続を望む困窮する中堅中小企業の飲食店などを対象として、確定申告データや家賃契約書などを活用し、事業規模や店舗コストなど経営への影響の度合いに応じた協力金の検討が必要。自治体による協力金支給の環境を整備するとともに、地方創生臨時交付金の積み増しなどの必要な財政支援を図られたい。
(2) 人の移動や活動制限の影響を大きく受けている事業者への支援の強化
感染拡大により人の移動や活動制限の影響を大きく受けている宿泊、交通、イベント関連事業者など厳しい経営環境が続く事業者に対し、事業規模や影響の度合いに応じた家賃補助の上乗せ、一時支援金の拡充などの支援強化が必要。
(3) 緊急事態宣言地域以外の事業者支援の強化
緊急事態宣言対象地域以外の事業者も全国的な人の移動制限や自粛ムードに伴う活動制約から危機的な状況に陥っている。宣言対象地域外の事業者向けの支援制度の創設や一時支援金の対象拡大などを検討されたい。
(4) 資金繰りに困窮する事業者への対応強化
①年度末の資金繰り支援の強化
コロナ特別融資の据置期間が過ぎて返済が本格的に始まる中で、年度末の資金繰りに困窮している事業者の実情に応じた、最大限の支援と配慮が不可欠である。
②税や社会保険料の減免と納税資金などの融資など
現況下で多くの事業者は、固定費負担に耐えられず危機的状況にある。赤字企業にも賦課される固定資産税などの諸税とともに、社会保険料などの減免を図られたい。また、猶予されている納税資金などの融資を受けられる体制の整備が必要である。
(5) 雇用調整助成金の特例措置の延長、一般会計による財源負担の実施
雇用調整助成金は、雇用の維持・安定はもとより、感染拡大収束後の経済の力強い回復に向け、極めて大きな役割を担っており、当面は延長するなど柔軟に対応されたい。また、本措置に伴う財源は一般会計で負担すべきである。
2 迅速かつ円滑なワクチン接種の推進と医療提供体制の抜本的な強化
(1) ワクチン接種の推進、日本産ワクチンおよび治療薬の開発の加速化
①ワクチンの計画的かつ迅速な接種
ワクチンの安定供給に努め、自治体と連携し、計画的かつ迅速な接種を進められたい。
②在留邦人のワクチン接種体制とワクチン接種証明書の発給体制の整備
海外に居住する在留邦人がワクチンを在外日本大使館や日本到着時に空港などで接種できるよう至急環境を整備されたい。また、ワクチン接種証明書発給体制を整備し、活用方策を検討されたい。
③日本産ワクチンおよび治療薬の実現
国家安全保障の観点から、国内メーカーによる日本産ワクチンおよび治療薬の早期開発・生産に重点投資し、早期供給を実現されたい。
(2) 地域医療連携による医療提供体制の抜本的な強化
わが国は、諸外国に比して感染が抑制・制御されているが、今後もワクチン接種とあわせて、医療提供体制の拡充を進めておく必要がある。このため、医療従事者の確保や保健所の負担軽減に資する民間委託などへの支援を拡充するなど、医療提供体制の抜本的な強化を速やかに進められたい。
(3) 将来の海外往来の活発化を見据えた水際対策の徹底
変異株が懸念される中、水際対策の一層の徹底が不可欠である。このため、入国者の待機・隔離用宿泊施設の確保とともに入国時PCR検査など対策の強化が必要である。また、COCOAの国内普及の再強化とともに、入国外国人へのアプリ使用義務化など、入国後の状況確認が重要である。
3 足元の経済回復に向けた道筋の提示
(1) 科学的根拠に基づいた感染リスクとこれまでの対応効果などの具体的な明示
感染拡大から1年以上が経過し、国民や事業者のさらなる協力を得ていくためには、科学的根拠に基づき、飲食や人の移動などの感染リスクとこれまでの対策効果を具体的に示されたい。
(2) 国民や事業者が希望を持てる将来への道筋の明示
東京オリンピック・パラリンピック後にさらに経済活動を活発化させる足元の経済回復に向けた道筋を、国民や事業者への力強いメッセージとして発出されたい。
4 地域の感染状況に応じたGoToキャンペーン事業の再開と実施期間の延長
(1) 感染状況が一定程度収まった地域からのGoToトラベルの再開
GoToトラベルについては、感染状況が一定程度収まった地域において、各自治体の判断により、例えば県内あるいは地域ブロックごとに再開することを検討すべきである。
(2) GoToキャンペーン4事業の実施期間の延長
GoToキャンペーン4事業の実施期間は全体的に本年6月末までとなっているが、感染拡大防止の観点からも駆け込み利用の集中を避け、より多くの人が制度の恩恵を得られるよう、実施期間の延長が必要である。
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