日本商工会議所の三村明夫会頭は2日、経済産業省・中小企業庁が今年度から新たに設定した「価格交渉促進月間」のキックオフイベントに出席し、取引適正化の推進により大企業と中小企業の新たな共存共栄関係が構築されることへの期待を表明した。イベントには、梶山弘志経済産業大臣のほか、経団連の十倉雅和会長や川口商工会議所の伊藤光男会頭(日商中小企業経営専門委員会共同委員長)など大企業と中小企業の経営者らが出席。適正な価格交渉を通じた「共存共栄関係」の重要性を呼び掛けた。
イベントの冒頭、あいさつした梶山大臣は、「コスト増加分を発注企業側に転嫁できていない中小企業の約半数は、そもそも価格交渉の機会を確保できていない」と指摘。「『その技術と経験に見合う対価を』をスローガンに、大企業と中小企業の価格交渉を促進する」と述べ、「価格交渉促進月間」のキックオフを宣言した。
その上で、梶山大臣は、「大企業と中小企業の適正価格による取引、共存共栄の関係を再構築していくためには経営者のリーダーシップが必要不可欠」との考えを表明。「価格交渉の重要性を経済界全体で共有する機会にしたい」と述べ、取引適正化への協力を広く呼び掛けた。
日商の三村会頭は、「残念ながら弱い立場の中小企業は、サプライチェーンを支える重要な役割を担っているが、原材料価格の高騰や労務費の上昇分が取引価格に適切に反映されないため、苦しい状況が続いている」と指摘。受注側企業から発注側企業に対し、コストアップの実態を反映した価格交渉の協議に応じるよう促す「価格交渉促進月間」を毎年、定期的に実施することを「意義のある取り組みだ」と述べ、高く評価した。
また、価格交渉促進月間の取り組みは、三村会頭が主導して実現した「パートナーシップ構築宣言」の考え方と同様のものであるとの考えを表明。「取引価格の適正化を通じて、サプライチェーン全体で、共に付加価値向上を目指すことが、わが国経済全体の成長基盤の強化につながる」と強調した。
イベントには、梶山大臣、日商の三村会頭、川口商工会議所の伊藤会頭、経団連の十倉会長のほか、大企業と中小企業の経営者らが出席。近年の価格交渉の実態、大企業と中小企業の関係性や取引適正化に向けた各社の考え方、実際の取り組みなどを紹介した。
経済産業省では、下請Gメンの活用、幅広い業界への周知活動などを通じて、受注側企業から発注側企業に対して積極的に価格交渉が行われる環境を整備。大企業と中小企業の共存共栄関係の構築に向けた「パートナーシップ構築宣言」については、年度内に宣言企業2000社を目指す政府目標の達成に取り組む。
具体的には、価格交渉促進月間終了後の10月に、受注側企業に対して、下請Gメンによる重点的なヒアリング(2千社程度)と数万社規模でアンケート調査を実施。調査結果を発注側企業に周知するほか、先進的な取り組み、グッドプラクティスを公表する。下請代金法に違反する事案については、公正取引委員会と連携して厳正に対処していく。
また、受注側企業の価格交渉担当者向け、発注側企業の調達担当者向けに、下請代金法に関するセミナーや講習会などを、オンライン形式でそれぞれ実施。受注側企業向けには、価格交渉などの相談対応にもオンラインで応じる。
最新号を紙面で読める!