政府は8日、「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)の第2回会合を首相官邸で開催し、緊急提言を取りまとめた。提言では、新しい資本主義の起動に向けた考え方とともに、当面、岸田内閣が最優先で取り組むべき成長戦略と分配戦略の具体策などを提示。会合に出席した岸田首相は、「真っ先に取り組む課題については、今回の経済対策において実行に移す」と述べ、提言内容の実行に意欲を示した。
会議に出席した日本商工会議所の三村明夫会頭は、緊急提言で成長と分配の好循環について、「成長戦略によって生産性を向上させ、その果実を賃金として分配する」と明確に示されたことなどを高く評価。「新しい資本主義のイメージが鮮明になった」との見方を示した。
一方で、将来不安を背景にした消費性向の低下について指摘。「消費を通じた次の成長につなげるためには、賃金増が消費に結び付くことが必要。成長戦略を進めると同時に、『全世代型社会保障構築会議』を成長戦略の重要な会議と位置付けるべき」との考えを示した。
中小企業の生産性向上については、「事業承継や事業再構築、取引適正化などの取り組みと並び、IT・デジタル技術の普及が鍵を握る」と指摘。「コロナ禍を契機としたデジタル化の流れを加速させることが重要」と述べ、「伴走支援ができる専門人材の手当てが最大の課題」との考えを示した。
また、「過去10年、地方圏の方が東京圏よりも経済成長率が高くなっている」と指摘。「わが国全体の経済成長の観点からも、地方創生をより重視すべき」と強調した。
緊急提言では、まず「新しい資本主義の起動に向けた考え方」で、「経済成長を通じて所得が向上する道筋とともに、全世代型社会保障の構築を進めることで、将来不安の解消を進める」と強調。「成長と分配の好循環」の実現に向け、あらゆる政策を総動員していく姿勢を示した。
成長戦略については、「科学技術立国の推進」「スタートアップの徹底支援」「デジタル田園都市国家構想の起動による地域活性化」「経済安全保障」の4本柱を提示。分配戦略では、事業環境に応じた賃上げ気運の醸成支援のほか、労働分配率向上に向けた賃上げ企業への税制支援の強化や、中小企業の事業再構築、生産性向上への助成拡充、私的整理円滑化のための法制度整備などが盛り込まれた。
新しい資本主義実現会議 緊急提言(主な項目)
Ⅰ.新しい資本主義の起動に向けた考え方
Ⅱ.成長戦略
1.科学技術立国の推進
2.わが国企業のダイナミズムの復活、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援
3.地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の起動
4.経済安全保障
Ⅲ.分配戦略
1.民間部門における中長期も含めた分配強化に向けた支援
2.公的部門における分配機能の強化
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