日本商工会議所と公益社団法人日本観光振興協会(日観振)の共管で運営している「観光危機管理・事業継続力強化研究会」はこのほど、宿泊、観光施設、飲食、交通事業者の事業継続計画(BCP)作成を支援する「観光BCP作成ガイド」を策定し、公開した。観光関連事業者向けに特化したガイドに沿って自社の備えが検討できるため、宿泊、観光施設、飲食、交通の各分野の実情に応じたBCPの作成が可能。また、特に危機対応のうち、事業継続と危機後の事業回復を中心に作成している。
ガイドは宿泊、飲食など業種ごとに作成ガイドと記入例を提示。完成がイメージできる「BCP例」も複数用意した。
具体的な項目は、「事業継続計画(BCP)の基本方針」「災害・危機の想定」「BCPの作成・運用体制」「平常時の減災への取り組み」「危機の発生が間近に予想される時の対応」「危機発生直後の対応」「危機後の対応」「確実な事業継続への備え」「危機後の復旧・回復・事業再開への取り組み」など。項目ごとに必要な基本的な対応などの記入例を分かりやすく示し、容易に自社用にアレンジできる内容となっている。
例えば、「確実な事業継続への備え」では、災害・危機後の早期事業再開、継続のため、また、観光客の減少による営業の落ち込みに対応するための準備事項を確認。具体的には、「事業中断の場合の損失額」「損害保険の加入状況」「災害・危機後の部門別の通常営業再開目標」「業務を実施するために必要な資源と代替案」「業務継続に必要な緊急連絡先」などを示し、代替策では、業務の遂行に必要な人員、建物、道具や設備、情報システムなど、それぞれの具体策も例示している。
また、「危機後の復旧・回復・事業再開への取り組み」では、「災害・危機後の部門別の通常営業再開目標」に沿って、早期に事業の復旧・回復の計画を立て、「専門家による建物・設備の被害の調査」「復旧工事資金の調達・発注」「破損した備品などの買い替え・補充」などの着実な実行の重要性を指摘。「営業再開に向けた情報発信」「営業回復に向けたプロモーション」「従業員とのコミュニケーション」などについても具体策を示した。
日商などでは、観光関連事業者にガイドの活用・周知を呼び掛けるほか、各地商工会議所などの主催によるセミナー開催も支援。他業種に比べBCP作成率が低いとされる観光関連事業者の事業継続力・危機管理能力の向上を後押しする。
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