政府は5月15日、「第27回未来投資会議」を首相官邸で開催した。会議では、成長戦略や高齢者雇用の促進などについて議論した。会議には日本商工会議所の三村明夫会頭と、日商からの推薦で、日商の鳥澤加津志女性等活躍推進専門委員会委員(さいたま商工会議所青年部・監事)が出席。三村会頭は成長戦略について、「中小企業の生産性や競争力には大きな改善の余地があることは明らかであり、その担い手として努力すべきは当然に中小企業自身であるが、政府や大企業ができることもたくさんある」と指摘。中小企業の生産性や競争力の改善を強力に促すための政策の視点を、成長戦略に盛り込むよう要望した。
三村会頭は日本の成長のためには、「中小企業の生産性を高めて付加価値を増加させ、賃上げを通じてその従業員や家族の消費を支え、地域経済にも貢献するという好循環を促すことが不可欠」と指摘。その実現に向けた視点を成長戦略に位置付けるよう求めた。
好循環の実現に向けた方策としては、取引価格の是正と中小企業における身の丈IoTやロボットなどの普及促進について言及した。身の丈IoTやロボットに関しては、政府の支援策が近年強化されており、その結果、中小企業でも徐々にデジタル技術の活用が進んでいるが、「『発火点』には到達しておらず、この動きをいかに早期に広めるかが喫緊の課題」と述べた。
鳥澤委員は高齢者雇用について、「働く意欲、経験がある高齢者がその能力を十分に発揮できる環境を整備していくことは、人手不足に苦労する中小企業としても、前向きに取組むべきこと」とコメントした。一方で、高齢者は、その健康年齢や意欲などの面で個人差が大きいという現実もあることから、これまで活躍した企業において一律に継続して雇用していくことが厳しい場合が想定されることなど、懸念される点も指摘。今後の議論では、中小企業の生の声も十分に反映し、一律継続雇用年齢引き上げでなく、企業の実態を踏まえつつ社会全体で高齢者を活用していくことが必要との考えを示した。
安倍晋三首相は、成長戦略について、「第4次産業革命を最大限に生かし、わが国の生産性向上、力強い経済成長につなげるためには、経済社会システム全体にわたる再構築が求められる。とりわけ、これまでの人材・技術の囲い込み型の自前主義から開放型、連携型のオープンイノベーションへ構造面での変革を進めていく」と述べた。高齢者雇用の促進については、70歳までの就業機会の確保に向けた法改正を目指す意向を表明。その際には、「それぞれの高齢者の特性に応じて多様な選択肢を準備する必要がある」として、定年延長や継続雇用制度の導入に加え、他の企業への再就職や自営、起業、社会貢献活動への支援など幅広い選択肢を用意する考えを示すとともに、今夏の成長戦略取りまとめに向けて調整を進めるよう関係閣僚に指示した。
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