Q 当社は家族経営の製造業です。事業継続計画(BCP)に取り組めていない中、同業者から、地元自治体が勧める簡易BCPが取り組みやすいと聞きました。簡易BCPとはどのようなものなのでしょうか。
A 自治体が提供する簡易BCPは、地元企業のBCP策定を支援するため、地域の特性に合わせて最低限決めておくべき項目が絞りこまれたBCPです。人手不足や人材が乏しい企業でも取り組みやすくまとめられていますので、初めて策定する場面だけでなく、資金面で公的支援を受けられる事業継続力強化計画を策定する際のポイント整理などにも利用することができます。
自治体が地域の特性に合わせて簡易な事業継続計画(BCP)を考案し、地元企業のBCPへの取り組みを後押しする動きが広まっています。この自治体が勧める簡易BCPは、事業継続に際し最低限決めておくべき項目に絞り込んだ専用の様式や、策定のための充実したガイドに特徴があります。次に挙げる策定ポイントに沿って検討し、シートを埋めていくことで策定できる仕組みとなっています。
事業継続方針・目標の決定
まず、自社がなぜ事業継続に取り組む必要があるのか、目的を明確にします。自然災害が発生し、事業が止まれば、地域経済やサプライチェーンに大きな影響を与えてしまいます。従業員の雇用が難しくなるかもしれません。従業員やその家族、顧客や取引先、地域など、全てのステークホルダーへの影響を考え、必要性を明らかにします。 そして、災害時にも早期に再開しなければならない、優先的に復旧すべき事業に対して、その復旧時間、すなわち、その事業が停止しても許容される最大の期間を目標として設定します。
災害時のBCP推進体制の整備
次に、自社の事業所や工場などがある地域の災害などのリスクを確認します。地域のハザードマップを利用すると、必要な対策が見えてきます。自社の建物や設備の被害だけでなく、電力や交通、上水道など、公共インフラが被害を受けた際の影響も考慮します。 そして、有事の際に混乱なく対処できるように、社内の責任体制や推進体制、発生時の役割などを明確にしておく必要があります。全体を統括する責任者は、企業の代表者、社長です。安否確認や安全確保など、大規模災害が発生した直後の社内の指揮は、人事総務部門の責任者などが担います。優先事業の継続など、事業継続のための復旧対応の実務は、事業部門の部門長や工場長が務めます。現場部門では、誰が何を担うのか有事における役割を決めるほか、発生時の指示や連絡のルートに従って対応する事柄を取り決めておきます。
事前(減災)対策の決定
平時における減災対策も欠かせません。施設・設備・備品などのハードの対策だけでなく、商品仕入先との連絡や代替調達先の確保、部門体制の配置換えなど、ソフト面の対策も必要です。特に、事業継続に必要な資源が利用できなくなった場合に備え、代替資源を確保する手段は複数想定しておきましょう。また、対策の推進には、ヒト、モノだけでなく資金の手当も必要です。減災対策費、災害復旧費などを試算して、調達可能な手元資金を確認し見込んでおきます。
発動から復旧に向けて
災害発生時、初動対応として重要になるのは、「人命の安全確保」「非常時・緊急時の体制の構築」「被害状況の把握・被害情報の共有」です。従業者の安否、自社の被害、委託先や取引先の被災状況などをどう把握するかを考えておかなければなりません。また、事業継続目標を踏まえた早期復旧に向けては、委託先や取引先とも事前に災害時の対応を取り決め共有し、理解を得ておくことが重要です。 (中小企業診断士・竹内 敏則)
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