Q 当社は新たに正社員の募集を行う予定です。社内のパートタイマーや契約社員から正社員登用ができればベストではありますが、必ずしも正社員に適した人材がいるとも限らないため、並行して社外の募集も行いたいと考えています。このような場合、優先的に社内のパートタイマーや契約社員から募集を行うべきでしょうか。正社員の募集に何か法的な制約があるのか教えてください。
A 正社員募集時における社内のパートタイマーや契約社員からの募集義務については、特定の法律による直接的な義務の規定はありません。社内公募と社外公募のそれぞれのメリットやプロセスを把握した上で、各会社の人事方針や採用ポリシーに基づいて募集・採用をしてください。
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」は、通常の労働者への転換を推進するため、パートタイマーなどに対して募集事項を周知すること、配置希望の申し出機会を付与することなどのいずれかの措置を行うことを義務化しています。
ただし、本措置はいずれかを選択することが可能であるため、必ずしも通常の労働者の求人情報などの周知は義務化されていません。従って、正社員募集時の社内のパートタイマーや契約社員からの募集については、各会社の人事方針や採用ポリシーに基づいて自由に決定することが可能です。
社内公募で優秀な人材を確保
社内のパートタイマーなどが正社員に転換することは、会社にとっては優秀な人材の確保と育成につながり、労働者にとってはキャリアアップと安定した雇用を実現する機会となります。そのほかに以下のメリットが考えられます。
・会社の文化や業務に慣れているパートタイマーなどが正社員になることで、モチベーションが向上し、生産性が上がる。
・外部から新たに人を採用する場合に比べて、選考や教育訓練にかかるコストが削減できる。
・既存の業務に精通しているため、短期間で戦力化が可能となる。
社内公募を行う場合のプロセスは以下のとおりです。
①公募情報の発信:社内掲示板や社内メールを通じて、正社員転換の公募情報を周知し、公募の詳細(応募資格、必要なスキルなど)を明示する。
②応募受付:期間を設け、応募書類(履歴書、職務経歴書など)を受け付ける。
③選考:書類選考、面接、適性検査などを実施する。選考基準を明確にし、公平な評価を行う。
④採用:選考結果を応募者に通知し、正式な採用手続きを行う。転換後の研修やサポート体制を整える。
社外公募で競争力アップ
一方で、社外公募を適切に活用することで、会社は多様な人材を確保し、競争力を高めることにつながります。社外公募のメリットとしては、以下の内容が考えられます。
・外部から新たな人材を迎えることで、会社に新しい視点やスキルを導入できる。
・異なるバックグラウンドを持つ人材を採用することで、社内の多様性が向上し、イノベーションを促進できる。
・外部からの人材採用により、競争力のある人材を確保することができる。
社外公募を行う場合のプロセスとしては、以下のとおりです。
①募集要項の決定:求人内容、応募資格などを明確にし、募集要項を決定する。
②公募情報の発信:求人サイトや転職エージェント、SNSなどを活用し、広く公募情報を発信する。
③応募受付:応募者からの応募書類を受け付ける。
④選考:書類選考を実施し、面接や適性検査を行い、最適な人材を選定する。
⑤採用:採用決定後、入社手続きを行い、研修を実施する。新しい環境にスムーズに適応できるようサポートを行う。
社内・社外公募のメリットやプロセスを把握した上で、自社の事情に即した募集・採用をしてください。
(社会保険労務士・吉川 直子)