Q 当社はある大手靴修理チェーンから、靴の修理を受託していますが、このたび、修理単価を従来の半額にするよう求められました。価格改定の要請を断ることで、仮に取引を打ち切られた場合、当社の売り上げは大幅に減ってしまいます。どうしたらよいでしょうか。
A 委託事業者によるこのような行為は、「買いたたき」と呼ばれ、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」)および中小受託取引適正化法(以下「取適法」)に違反する可能性があります。貴社は、全国47都道府県に設置された「取引かけこみ寺」に調停を依頼すること、公正取引委員会に対して事実関係を報告し、適切な措置を講じることを求めることができます。
不公正な取引方法
修理単価を従来の半額にするように要請することは、正常な商慣習によるものとは言い難いものです。取引先のこのような行為は、買いたたき(発注する物品・役務などに通常支払われる対価に比べ、著しく低い代金を不当に定めること)に当たり、「不公正な取引方法」として独禁法に違反する可能性があると言えます。
「不公正な取引方法」は、同法2条9項で定義付けられており、さらに、公正取引委員会によって何が不公正な取引方法に当たるかについての一般的な指定がなされているほか、具体的な判断基準について、いくつかのガイドラインが示されています。取引先から不当な取り扱いを受けたと感じたら、公正取引委員会によって示されている種々のガイドラインなどを検討することが必要です。
また、継続的な取引関係を背景として取引上優越的な地位にある事業者が、正常な商慣習に照らして取引先に不当な不利益を与えるような行為を行うことは、不公正な取引行為に該当し、違法になると定められています。
ここでは、取引先が「優越的な地位」にあるかが問題となりますが、これについては取引先への取引依存度、取引先の市場における地位、取引先変更の可能性などを考慮する必要があります。取引先が大手チェーンであるというご質問のケースのような場合、取引先は優越的な地位にある可能性が高いでしょう。
中小受託取引における買いたたきの禁止
ところで、買いたたきは、委託事業者と中小受託事業者の中小受託取引においてよく見られることから、取適法では、中小受託取引における委託事業者の買いたたきについて、特別の規定を設け、これを禁止しています。
例えば修理委託の場合、次の①~③のいずれかを満たせば、取適法が適用されるため、取引先の買いたたきが禁止行為に該当する可能性が高いと言えるでしょう。
①委託事業者の資本金の額が3億円超である場合、受託業者が個人もしくは資本金の額が3億円以下の法人であること
②委託事業者の資本金の額が1000万円を超え3億円以下である場合、受託事業者が個人もしくは資本金の額が1000万円以下の法人であること
③委託事業者の常時使用する従業員が100人超である場合、受託事業者が個人もしくは常時使用する従業員が100人以下であること
買いたたきによって取引を打ち切られるなどして、損害を被ったときには、取引先に対して損害の賠償を請求することも考えられますが、いきなり裁判を提起することはかえってトラブルを深刻なものにする恐れがあります。まずは取引先に対し、このような買いたたきが違法なものであることを説明し、再考を促すべきでしょう。
また、この種のトラブルについては、公益財団法人全国中小企業振興機関協会が、全国47都道府県に窓口を設けている「取引かけこみ寺」事業で、第三者的な立場から解決に当たっているため、相談・調停を依頼することも有効な手段です。その他、公正取引委員会に対して事実関係を報告して、適切な措置を講じるよう求めることもできます。
(弁護士・軽部 龍太郎)
