Q これまで3回、契約を更新してきた契約社員がいますが、勤務に問題があるため、雇い止めにしたいです。更新の基準では、勤務成績や勤務態度を考慮すると記載していますが、雇い止めできますか。
A 過去3回の契約更新時に「更新契約書をきちんと作成しているか」、「更新時に面談を実施し、更新契約の内容、特に契約期間終了時の更新についての基準を、本人に説明しているか」がポイントです。勤務に問題がある点については、本人に認識させ改善を促してきたかも重要です。これらを行っていれば、その社員が更新を期待していても、その期待には合理的な理由があるとは言えず、契約期間満了による雇い止めは可能と考えられます。
有期労働契約(契約期間のある労働契約)は、契約期間が終了すると労働契約も終了するのが原則です。しかし、有期労働契約を更新し、引き続き雇い続けるケースも少なくありません。有期労働契約の従業員が従事している業務が契約期間で終了せず、恒常的な業務である場合、その契約を更新し、引き続き業務に従事してもらう方が便宜なことがあるためです。このように有期労働契約には契約更新があり得ます。そして契約期間の終了時に雇用関係を終了させることを「雇い止め」といいます。
有期労働契約に関する法規制
有期労働契約の更新・雇い止めに関する法規制は、次のようなものが挙げられます。
①有期労働契約の締結、更新および雇い止めに関する基準(厚労省告示第357号):有期契約の更新・雇い止めに関する労使のトラブルを防止する目的で、労働契約締結時の明示事項、雇い止めの予告、雇い止めの理由の明示などを定めています。
②労働条件の明示(労基法15条):使用者は、労働契約締結時に労働者に労働条件を明示しなければなりませんが、有期労働契約の更新に関する基準、契約を更新した際の通算契約期間や更新回数に上限を定めている場合は、当該上限も明示事項とされています。
③契約更新の申し込みに対するみなし承諾(労契法19条):労契法19条は、雇い止めが認められない有期労働契約を定めています。有期労働契約の更新を繰り返し、更新時の手続きも契約書をつくるだけなど、契約期間の意味が形骸化しているケースがあります。また、使用者が労働者に対し、契約更新の期待を持たせる言動を行っていることもあります。このような場合、雇い止めに当たって期間の定めのない労働契約の解雇と同等の要件が求められることになります。
契約社員の雇い止め
契約社員との労働契約や就業規則において「勤務成績、勤務態度、業務遂行状況、能力を考慮して更新することがある」旨が定められており、会社が勤務成績を考慮して契約社員に契約更新の申し込みを行わない場合、契約社員から契約を更新してほしいと申し入れがあったとしても、会社が承諾しなければ、原則として契約期間の満了により労働契約は終了します。
ただし、前述の労契法19条が適用される場合、例外となりますので注意が必要です。令和3年8月31日東京高裁判決は、通算契約期間3年2か月、更新回数3回、契約期間満了時69歳の契約社員の契約更新について、担当していた業務の進捗状況に問題があったことを本人も認識しており、更新の判断事由から会社が更新しないことも十分に認識できたとして、本人が更新を期待していたとしても、その期待について客観的に合理的な理由があるとは認められず、労働契約法19条2号(有期労働契約労働者が、契約期間満了後も雇用契約が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合)には該当しないと判断しました。
ご質問の場合、更新時の手続きを適切に行い、更新の判断に勤務成績や勤務態度を考慮することを本人に説明した上で、勤務上の問題を本人に認識させていれば、更新への期待が合理的なものとは認められにくく、契約期間満了による雇い止めは可能と考えられます。
(弁護士・山川 隆久)
