日本・東京商工会議所は5月14日、提言「『外国人との秩序ある共生と受け入れ』の戦略的な推進に向けて」を取りまとめた。日商が外国人との「共生」を主題に据えた提言を行うのは今回が初めてとなる。提言では、日本人も外国人も「経済社会を共に支え合う存在」であるとし、外国人が日本で安全・安心に学び、働き、暮らし、地域に貢献してもらう環境整備の重要性を指摘。将来的な国力の維持・強化に向けて「外国人との秩序ある共生と受け入れを重要な国家戦略の一つに位置付け、諸外国の外国人政策の経験や反省などを検証し、日本ならではの真の共生のための外国人政策を確立すべき」と主張している。
今回の提言取りまとめの背景にあるのは、成長型社会への移行に伴う深刻な構造的人手不足だ。省力化やデジタル活用が進むものの労働需給の逼迫(ひっぱく)は継続しており、医療、介護、第1次産業、運輸、建設、設備管理、飲食、宿泊などの産業は今や外国人の協力なしには成立しない状況となっている。特に社会を支えるエッセンシャル分野の人手不足は、地域や企業の持続性をも毀損(きそん)する事態につながる。一方で、一部の地域では法制度やルールを守らない者による文化的衝突も発生している。
こうした中、今回の提言では、政府の法制度やルールを守らない者への厳格な対応を評価しつつ、これまでの企業や自治体への場当たり的な対応を排し、日本人と外国人が「経済社会を共に支え合う存在」であるという基本認識に立った「国益に即した戦略が必要」と訴えている。また、「真の共生」の実現に向けては、客観的なファクトに基づく議論を行うための「外国人関連統計の整備」を大前提として提示。その上で①国家戦略として、国益を見据えた外国人対策の確立②「地域住民」である外国人が包摂される社会の構築③「働き手」である外国人の秩序ある受け入れの推進――を「三つの提言」として掲げた。
①では、外国人政策の将来像などを議論する国民的議論の場の設定や、政策の企画立案から実行までを一元管理する「司令塔」の設置を要望。国、地方自治体、企業、国民などの役割を明確化し、財政措置の法的根拠となる「基本法」の制定や、客観的なデータに基づく外国人への無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の解消も求めている。
②では、日本語習得や地域貢献などを全国共通水準で推進する「包括的プログラム」を創設し、当該プログラムの受講状況などを在留資格の審査・更新時の評価と連動させる仕組みを提唱。さらに、将来的な孤立や不法就労などの防止に向けた外国人児童への「教育義務化」、生活支援の拡充、災害時の情報提供といったセーフティーネット構築を盛り込んだ。
③では、島国という日本の地理的強みを生かした戦略的な受け入れと、在留資格管理の徹底を要望。加えて、育成就労制度への円滑な移行や現場実態に即した制度改善を求めるとともに、国が前面に立った国内外での日本語教育や人材確保、送り出し国への支援拡充を促している。
日商は今後、提言を踏まえたわが国ならではの外国人政策の確立を政府に強く働きかけていく。また、秩序ある共生の実現に向け、商工会議所として国や自治体、企業、支援機関など、政策を実行する各主体と緊密に連携・協働していく方針だ。
