原因は売る側に
マーケットをつくることについての前回の話を踏まえ、今回は、今日からすぐできること、すぐにでも実践すべき発想を紹介する。
分かりやすくするために単純化して説明しよう。皆さんが500㍉㍑入りのペットボトルの水を私に売るとする。私が要らないと言うと、大抵のマーケティング論は皆さんに、「50代男性にこのミネラルウオーターは売れない」と教える。「水より栄養ドリンクを好むから」「容器のデザインが訴求しないから」といった理由まで、ご丁寧に後付けで付けてくれる。
でも、私はそのとき喉が渇いてなかっただけじゃないか? 講演後に売ってくれれば、2時間も喋って喉カラカラだから買っただろうにね。
店が目の前の顧客のニーズに応えられなかっただけなのに、売れなかった原因があたかも顧客の側にあるかのように教えるのは、不誠実だと私は思う。
パターンを診る
では、どうやって目の前の顧客に応えるか。
まずは顧客のパターンを診よう。その顧客は図の新規客、準固定客、固定客のどれか。年代は?熟練度は?これだけで27パターンもある。27パターンを十把ひとからげに見ていたら買ってもらえなくても当然ですよ。
用途に合わせる
パターンを見定めたら、次は売り方の切り口を考えよう。売り方の切り口は大まかに用途と販売形態とで考えられる。
例えば自分用の水は顧客のタイミングに合えば売れるが、それだと普通は1本だ。でも、例えば自家用として、「この水はミネラル豊富で寝る前に飲むとお肌に良いですよ、奥さんにいかがですか?」とお勧めすれば、手土産に6本入りが売れるかもしれない。
さらには、ギフト用としてなら、例えば父親がウイスキーの水割りが好きなのであれば、「まろやかでおいしい水割りができますよ。実家のお父さんへのお中元にいかがですか」とお勧めすれば、宅配も手伝って1ケース24本入りの箱買いもあるだろう。
売れた数は1本、6本、24本だ。以上全て、相手のお客さんは同じ1人の顧客、50代の男性である点に気付いてほしい。売れなかった理由をお客さんや商品のせいにせず、原因はあくまで店側にあるとすることで、ちまたのマーケティング論に振り回されていたときよりも24倍も多く売れる可能性が見えてくるのだ。
形態に合わせる
また、顧客が求める形態で商品を提案することも重要だ。夕食におでんを食べたいお客さんが今欲しいのは、調理前のタネなのか、汁とタネのセット品なのか。それとも、出来上がったおでんを買いたいのか。そこまで考えながら目の前のお客さんに向き合おう。それがマーケットをつくる基本だ。
(サトーカメラ株式会社代表取締役副社長・商業経営コンサルタント・佐藤勝人)
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