地域一番店になるためには何をすればよいのか。23歳で家業のカメラ店を業態転換、独自の経営スタイルを確立し、現在、栃木県内10店舗を運営する宇都宮市のサトーカメラ代表取締役副社長・佐藤勝人氏が、そのノウハウを伝授する新連載。
文化とは消費量だ
商業にとって「文化」とは何だろう。私は、商圏内の消費量が多いことだと考えている。サトーカメラがある栃木県のカメラ・レンズ消費量は47都道府県中でダントツの1位だ。私はこの事実に誇りを持っている。サトーカメラが〝地域一店〟として「写真」という文化を県内に根付かせている証だからだ。
皆さんの地域にもチェーンストアがあるだろう。ただ、彼らは別にその商品で地域に文化を根付かせようとは思っていない。追求しているのは買い物の利便性だ。
でも、それだと、ひとたび流行が去ればその商品は地域から消えてしまう。本来の価値が人々に知れ渡る前に、だ。
地域一番店の存在意義はまさにここ-文化創造-にある。人々がその商品を通して豊かになり幸せになるために、商圏をチェーンストアだけの世界にしてはいけない。皆さんの店は地域一番店になることを期待されている存在なのだ。
地域一番店への道
では具体的に、地域一番店になるために何をやるべきか。
一、自称から脱却する
店主が自分の金もうけ優先で地域の人たちのことを考えていない店は、「あっちの商品に手を出し、こっちの商品に浮気し」になりやすい。そしてそういう店ほど、世間で流行している間は得てしてその商品の地域一番店を自称したがる。 ハッキリ言おう。それじゃお客さんが迷惑だ。なぜって、一番店を名乗るということは「地域における文化創造を担う」という意思表明でもあるからだ。その覚悟と実力がない店がお客さんを振り回しちゃいけない。
二、シェアを決める
真の意味で地域一番店になるために、まずは商圏シェア3割を目指そう。3割あれば市場に影響を及ぼせる店になれることは、ランチェスターの法則(※)が立証している。日本には商品が1億アイテム以上ある。うち1アイテムでもいい。まず は「これに関しては地域で一番売っているぞ!」といえる店になろう。
三、単品を決める
自称からの脱却もシェア3割も、実は自店が何を売っていくかの単位=単品が決まってこそ達成できる目標だ。単品を定めるからこそ、上級者向けのハイグレードからビギナー用の廉価版まで、その単品の全価格帯を最終的に網羅できる。価 格帯を網羅すれば顧客層を選ばずに商圏全体に売ることができる。その結果としての「文化=消費量」でありシェア3割であり地域一番店なのであって、逆ではない。
ぶっちゃけて言えば、小さな店はシェア1%以下でもつぶれはしない。初めから店主の趣味と自己満足のための店だったらそのままでもいいだろう。
でも、皆さんが店を経営する目的、役割はそれだろうか? 自分よりお客さんが喜んでくれることのほうがうれしいから今日も店を開けたし、明日も開けるのではないのか?
であれば、今からでも遅くない。「地域一番店商法」を実践して、商品を通じてもっとお客さんを幸せにしようじゃないか。
(サトーカメラ株式会社代表取締役副社長・商業経営コンサルタント・佐藤勝人)
※軍事戦略を基に考案された強者と弱者が取るべき経営戦略を示した概念
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