石川県加賀市は人口約６万人、県の最南端、金沢市と福井市の中間に位置し、九谷焼・山中漆器などの伝統工芸や、山代、山中、片山津の三つの温泉地からなる「加賀温泉郷」が有名な観光地だ。2024年3月の北陸新幹線の延伸開業を控え、まち全体が盛り上がりを見せる中、若い世代を狙った今までにないユニークな仕掛けで全国から観光客を集めている。今回はそんな地域を盛り上げようと日々奮闘する加賀YEGにスポットを当てる―。

「レディー・カガ」が反響

加賀商工会議所を訪れた広報ブランディング委員会は、夕日が差し込む眺めの良い会議室に通され、そこで目を疑った。窓の外には真新しい駅舎と70ｍはあろうかという巨大な観音像。何とも不思議な光景にわれわれは驚きを隠せないまま取材は始まった。

加賀YEGは、東日本大震災の影響で全国的に自粛ムードが広がり、観光客が伸び悩む中、“地域全体でお出迎え”をテーマに、三つの温泉地「加賀温泉郷エリア」で働く女性100人が紛する「レディー・カガ」が、観光客をお出迎えするWeb動画を制作するプロジェクトを立ち上げた。これがさまざまなメディアなどで取り上げられて大きな反響を呼んだ。

さらになんと、とある映画が石川県で撮影されていたことをきっかけに映画化が決定。作品名はその名も「レディ加賀」。主演に小芝風花さんを据え、加賀温泉郷を舞台に旅館の若女将たちが奮闘するストーリーとなっている。昨年には撮影も終了し、24年3月の新幹線延伸開業に先立ち、前月の2月9日に全国公開が予定されている。

また、同プロジェクトからは、大型旅館を貸し切って開催される異色の音楽イベント「加賀温泉郷フェス」が派生し、その後も人気イベントに成長。旅館内の宴会場やロビー、ナイトクラブなどで多彩なパフォーマンスが展開されるこのイベントにはチケット付きの宿泊プランも用意されており、毎年約1000人の観客を動員するなど、地域の交流人口増加に一役買っている。

地域の各団体と共に

今年4月には、市内の加賀温泉駅を舞台にしたイベント「北陸新幹線フェスタin KAGA 2023」が開催されるなど、盛り上がりを見せる加賀市だが、これらのイベントは決して加賀YEGが単体で行ってきた事業ではない。 元々は旅館組合青年部が「レディー ・カガ」を企画したことに端を発しており、そこにYEGをはじめとする地域青年団体などが協力することによって大きな力が生まれ、いまやさまざまなイベントを開催するに至ったのだ。

一昨年には加賀ロータリークラブ（RC）、加賀青年会議所（JC）、そして加賀YEGで協力団体締結の調印式を行った。各団体の特色を生かしながらそれぞれのイベントにおいて役割を果たす中、YEGとしても「レディー・カガ」が来年上映されるに当たり、県知事や市長などを招いてのパネルディスカッションや、監督やプロデューサーのトークショーを開催し、加賀温泉郷フェスでは「かがやきフェスティバル」と銘打ったキッチンカーや地元食材を用いた飲食ブースを旅館の中庭で展開。「北陸新幹線フェスタin KAGA 2023」では、新しくなった駅舎見学や、加賀温泉郷観光大使の就任式、子どもたちに向けた九谷焼の絵付け体験イベントを実施した。

また、近年では行政を巻き込んだ未来会議なども各団体で催されており、それぞれの団体の存在意義を存分に生かしつつも、各団体の若い世代が同じ方向を向いて活動していけるような流れができつつある。 「加賀市もやはり人口減少が進んで若者が少なくなっています。そんな中で各団体や行政がバラバラに事業をするのではなく、皆で一つの大きな塊となって流れをつくり、連携を取りながら一緒に事業を行っていくことが、今後の新しい地域活性化の形になると信じています」と、23年度全国大会担当理事を務める辻覚さんは語ってくれた。

組織力アップでさらなる発展を

来年の3月にはいよいよ北陸新幹線延伸が現実のものとなり、ますます機運が高まる石川県。しかしその月のビッグイベントはそれだけではない。23年度日本YEGの集大成でもある「第43回全国大会　加賀能登の國 いしかわ小松大会」が、加賀市の隣、小松市で開催されるのだ。

この大会は、日本全国のYEG会員約1万人の来県を目指している。会期中はさまざまな交流を通して、地域住民と共に石川県の魅力を全国に、そして世界に向けて発信する機会として、また、世界における日本の役割や地域の新たなモデルへのヒントとなるよう、石川県内六つのYEG（加賀・小松・白山・七尾・輪島・珠洲）が一丸となって計画しており、加賀YEGも全国を駆け回ってPRする日々を送っている。

また、加賀YEGは今年創立30周年を迎え、新しい会員も増えてきた。今後はまず、若手会員の青年経済人としての意識向上と組織力の底上げを行い、その後、地域が、そして加賀YEGがもっと盛り上がるための政策提言や今後のビジョン策定などを行っていく計画だ。

大切な郷土の明るい未来のために全力で走り続ける加賀ＹＥＧ。彼らはますますかがやき続ける―。

【加賀商工会議所青年部】

会　長 ： 萬谷 浩幸

設　立 ： 1993年

会員数 ： 94人

HP ：http://kaga-yeg.jp