日本・東京商工会議所は9月28日、「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」結果を公表した。調査期間は7月18日~8月10日で、全国の中小企業6013社を対象に425商工会議所が調査を実施。有効回答は3120社(回答率51.9%)だった。調査結果では、「人手が不足している」と回答した企業は68.0%と前年比3.1ポイント増加。2015年の調査実施以降、過去最多となった。業種別では、特に、介護・看護、宿泊・飲食で人手不足の深刻度が高い結果となっている。
人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査(抜粋)
1 人手不足の状況と対策
人手不足の状況は、19年調査の66.4%をピークに、コロナ禍の影響で20年7~8月の調査では36.4%まで低下したが、22年2月調査以降「人手が不足している」と回答する企業の割合は増え続けており、今回過去最高の68.0%となった。そのうち6割以上(64.1%)が「非常に深刻(人手不足を理由とした廃業など、今後の事業継続に不安)」(6.9%)または「深刻(事業運営に支障)」(57.2%)と回答。「深刻でない」は35.7%だった。
業種別で見ると、介護・看護業が最多で86.0%。次いで、建設業(82.3%)。宿泊・飲食業(79.4%)、情報通信・情報サービス業(77.7%)、運輸業(77.1%)の順で多くなっている。
人手不足の深刻度で見ると、介護・看護業(88.4%)、宿泊・飲食業(82.7%)の2業種で、「非常に深刻」と「深刻」の合計が8割を超えた。また、2024年問題を抱える運輸業(75.0%)、建設業(65.6%)でも7割前後と高い割合となった。従業員規模別で見ると、5人以下の企業では「非常に深刻」が20.7%に達した。
人手不足の事業への影響については、「現有人員で工夫してやりくりしている」との回答が最多で77.2%。次いで「事業運営の具体的な支障が生じている(納期遅れ、品質・サービスの低下など)」(21.6%)、「事業の拡大(新規顧客や新規市場の開拓)を見送った」(18.7%)の順で多くなっている。
人手不足と回答した企業の対策については、「正社員の採用活動強化」がで最も多く、「パートタイマーなど有期雇用社員の採用」(34.0%)。「業務プロセスの見直しによる業務効率化」(33.2%)、「外注の拡大」(30.8%)、「社員の能力開発による生産性向上」(28.9%)、「IT化など設備投資による生産性向上」(25.2%)の順で多くなっている。
人材確保に向けた取り組みとしては、「賃上げの実施、募集賃金の引き上げ」(72.5%)が最も多く、「ワークライフバランスの推進(残業時間の削減など)」(38.1%)、「人事考課・給与制度の見直し」(36.0%)、「福利厚生の充実」(35.6%)が続き、待遇改善による取り組みが多い結果となった。その他では、「人材育成・研修制度の充実」(33.5%)、「オフィス・工場など、職場の環境整備」(27.0%)などの回答が多かった。一方、「多様で柔軟な時間設定」(15.4%)、「兼業・副業の許可」(14.3%)、 「場所にとらわれない柔軟な働き方」(12.0%)など、多様で柔軟な働き方の推進はいずれも2割に満たない結果となった。
2 女性のキャリアアップ支援
女性のキャリアアップ支援について、「必要性を感じている」と回答した割合が84.3%に達するも、そのうち6割弱が「十分取り組めていない」と回答。従業員数別で見ると、 301人以上は53.9%が具体的な取り組みに着手できているものの、21~300人以下の企業では、「十分取り組めていない」と回答した割合が5割を超えた。
女性のキャリアアップ支援で最も注力すべき対象・取り組みを見ると、「若手の正規女性職員の能力・意欲向上」が28.3%で最多。次いで、「中堅の正規女性社員のリーダーシ ップ」(22.3%)、「出産・育児期の正規女性社員が働きやすい環境整備」(18.9%)と続いた。
女性のキャリアアップ支援を行う上での課題については、「本人が現状以上の活躍を望まない」が53.0%で最も多く、「育成のための仕組みやノウハウが不足」(40.0%)が続く。その他は、「出産・育児などと両立できる体制・制度が不十分」(26.4%)、「管理職の指導力が不足」(25.6%)となった。
3 仕事と育児の両立
仕事と育児の両立推進について、「必要性を感じている」との回答が84.1%に達したが、うち約半数が「十分取り組めていない」と回答した。従業員規模別で見ると、従業員数が多い企業ほど「取り組んでいる」と回答した割合が高く、301人以上が68.6%で最多。次いで、101~300人以上(53.0%)、51~100人(50.2%)と続き、従業員数が多いほど 「取り組んでいる」企業が多い。一方、21人~50人で43.3%と半数を割り、従業員20人以下の企業では、「十分取り組めていない」が41.9%と、「取り組んでいる」(34.5%)を上回った。
仕事と育児の両立における課題については、「人手不足のため、子育て中の社員の仕事のカバーが難しい」(44.2%)が最も多く、「専門的・属人的な業務が多く、子育て中の社員の仕事のカバーが難しい」(44.2%)が続く。
政府・行政に求める支援・取り組みについては、保育所や放課後児童クラブ(学童)の施設増加、開所時間の延長など、「保育の質・量の拡充」を求める声が47.6%で最多。 業務の共有・標準化、業務をカバーする社員への手当支給など、「子育て中社員の業務をカバーする社内体制整備支援」(40.6%)、「人手不足の解消に資する採用支援の強化」(39.2%)、「両立支援に取り組む企業への助成・情報提供など」(37.2%)の順で多くなっている。 男性育休の取得状況については、取得率「0割」(取得者なし)が37.5%。育休対象者がいる企業に絞って取得割合を見ると、取得率「0割」(63.2%)が最も多く、年をめどとした政府目標「5割以上」取得とする企業は17.2%にとどまった。
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