政府は10月18日、観光立国推進閣僚会議(主宰:岸田文雄首相)を開催し、「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を決定、公表した。対策は、「観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応」「地方部への誘客の推進」「地域住民と協働した観光振興」の3本柱で構成。国内の観光需要の急速な回復に伴い、多くの観光地がにぎわいを取り戻す一方で、一部の地域・時間帯への偏在傾向も見られ、公共交通の過度の混雑や交通渋滞、マナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度低下などが懸念されていることから、対応策を取りまとめている。
観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応については、「観光客が集中する地域における交通手段や観光インフラの充実」「実情に応じた入域管理や異なる需要に対応した運賃設定の促進」「空いている時間帯・時期・場所への誘導・分散化」「マナー違反行為の防止・抑制」などの具体策を提示。「手ぶら観光」の実証導入(京都)、タクシー不足に対応する緊急措置の実施、富士山での適正な入山管理、観光スポットへの急行バス導入、混雑運賃設定など異なる需要に対応した運賃・料金の柔軟な設定などを盛り込んだ。
タクシー不足に対応する緊急措置については、「タクシーの供給力の徹底的な回復」「自家用有償(全国700団体)の徹底的な活用」「タクシー不足が指摘されている観光地域の対策」などを提示。具体的には、女性・パートタイム運転者拡大のための勤務形態柔軟化、事業者間における運行管理共同化の早期実施、地方部での営業所維持のための設備・台数要件の緩和、個人タクシー運転手が地域交通に貢献できる制度の創設、自家用有償旅客運送の運賃の見直し(運転者の適正報酬の確保)、複数のタクシー事業者が連携して行う乗り合いタクシーの運行(京都)、タクシー乗り場の混雑解消のためのポーターの設置(東京駅、京都駅)などを盛り込んでいる。
会議に出席した岸田首相は「インバウンドの宿泊先は3大都市圏が7割で一部の地域や時間帯によっては、過度の混雑やマナー違反による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生じている」と指摘。オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた緊急対策の内容を新経済対策に反映するとともに、持続的な観光地づくりに向けて、政府一丸となって取り組むよう、関係閣僚に指示した。
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